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ツールドフランスはエリート集団のチーム戦略勝負だ!

ツールドフランスツール・ド・フランスとは、毎年7月にフランス全土を使っておこなわれる、自転車ロードレースである。

ツール・ド・フランスが始まったのは1903年。和暦でいうと明治36年。その頃日本は、朝鮮半島を日本、満州を口シアの支配下に置くという妥協案をロシア側に提出するも決裂。翌年、日露戦争へと突入する。世界では、ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功。そんな時代の中、この世界一過酷なスポーツ競技、ツール・ド・フランスは始まった。

現在フランスにはレキップという最大手のスポーツ新聞がある。ツール・ド・フランスを見ていると 、「エキップ・ラボバンクー」なんていう掛け声を耳にするが、「エキップ」とは「チーム」のことで、ツール・ド・フランス開催時には「レキップ」の紙面をツールの記事がにぎわすが、普段はもちろん、いろんなチーム=いろんなスポーツの記事を掲載している。

この「レキップ」の前身にロトというスポーツ紙があり、その「ロト」がツール・ド・フランスを始めた。途中11回は戦争により開催されなかったが、07年で94回目を迎える。

さて、ここからはよりレースを深く読むための知識を紹介しよう。
まず、ツール・ド・フランスが奥深いスポーツになっている一番の特徴は、1チームが9人の団体スポーツであるということ。1人のエースを勝たせるためにほかのアシストたちはどんな戦略を立てていくのか、といった部分から解説してみたいと思う。

アシストの仕事の中で最も重要なのは「風除け」だ。自転車ロードレースは、風の抵抗をいかに少なくするかがキーポイントとなる。例えば普段、シティサイクルで向かい風の中を走っている と、ペダルが重くなり、体力を消耗する。それと同じで、レースとなればさらにシビアになり、少しでも風を除けて体力を温存したい。そこで使う方法が、F1などでもおなじみの「スリップストリーム」だ。

ちょっと想像しにくいかもしれないが、自転車で隊列になって走ると、1人目がちゃんと風を除ける壁になってくれて、2人目はかなりラクに走れる。2人目よりも3人目はもっとラクに走れる。人間1人のスペースでも、しっかりスリップストリームは生まれているのだ。これを利用するため、アシストたちは隊列を組み、防風壁になる。この隊列を組むことを、自転車用語で「列車を組む」と言う。

そして列車の先頭、つまり機関車になることを「列車を引く」と言う。これでアシストたちは、エースの脚を温存させる。

この列車が最も効力を発揮するのがスプリント勝負のかかったゴール前だ。スプリンターのエースを勝たせようと、ゴール数km手前から列車を組み、エースを3番目か4番目に据えてフィニッシュを目指す。

先頭を引くアシストは、風を全面に受けて走るので、途中で体力がなくなってしまう。すると列車から抜けて、2番目にいたアシストが今度は先頭を引く。このようにまるで口ケットが切 り離し作業をおこなうようにアシストたちが抜けていき、最後に真打ちのエースがフィニッシュラインを越える

このゴールシーンは、自転車ロードレースがよくわからなくても見ごたえがあるので、最初のうちはこのゴールシーンから面白味を感じるといい。
アシストはチームの女房役でもある風除けのほかにもアシストの仕事はあり、例えばエースの自転車がパンクをしたら、自分のホイールを外して渡すこともある。

レースには各チーム2台ずつのサポートカー(チーム力とも言う)が、後ろについて走っている。サボートカーは監督が運転し、メカニックも機材と共に乗り込んでいる。選手は無線をつけて走っているので、パンクやメカトラブルが起これば、チームカーを近くまで呼ぶことができる。

しかし、道路が狭かったり、ほかのメカトラブルに追われていたりすると、すぐにサポートカーが到着しない場合もある。そんなときもレースはどんどん進んでしまうので、応急処置として、アシストが自分のホイールを外し、パンクしたエースのホイールと取り替えて、ひとまずエースをスタートさせる作戦を取る。パンクしたホイールを預けられたアシストは、サポートカーが来るまで待って、なんとか自分をレースまで復帰させなければならない。

また、サポートカーが順調に到着したとしても、メカトラブルを復旧させるための時間は必要だ。この場合もレースは先に進んでしまうので、アシストが近くに待機し、エースのための風除けをしなが らレース復帰を目指す。

さらに水分や食料の補給では、アシストがサポートカーまで下がっていって、チーム全員の食べ物、 飲み物をジャージのポケット、背中、胸などあらゆるところに詰め込んで運ぶ。ハンドルから手を放してその作業をする姿は、まさに神業だ。

ツールに出場できる選手は世界のひと握りロードレースは、1つのレースに出場できる人数は200人までと決まっている。ツールの場合、1チームが9人なので、12チーム出場すれば189人、22チーム出場すれば198人が、その年のツールに出られるという計算になる。野球やサッカーのように交代選手はないので、本当にこの人数しか出場できない。

200人というと結構多いような気もするが、ヨーロッパにおいてロードレースはとても人気の高いスポーツで、競技人口も非常に多いことから、ツールに出られる選手というのはエリート中のエリートと言える。

その前段階も狭き門だ。まず、国際自転車競技連盟(UCl)が定める最高峰のツアーに属するチームに入らなければならない。プロツアーチームは現在20で、25~30人の選手がいるので、全部で約560人。
世界中で、560人しか出れないのだ。

ツールにはこのプロツアーチームを中心に、主催者枠のチームも出場できる。主催者枠で出場できるチームは、「プロツアー」の下のカテゴリー「プロフェッショナル・コンチネンタル」(通称コンチネンタル・プロ)に属するチームとなるが、こちらは28チームある。

ここから出られるのは2~3チームなので、ツールで活躍したい選手は、コンチネンタル・プロにいて選ばれるのを待つなんて博打はやっていられない。まず選手は、プロツアーチームに属しているだけでも拍手モノだし、その上ツールに出場できるのは、ゴクひと握りと言えるのだ。

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