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自転車を速く走らせるために良い呼吸法と鍛えるべき筋肉を紹介

自転車における呼吸とは
まずは「自転車における呼吸」がいかなるものかを正しく把握しておこう。
ロードバイクの深い前傾姿勢は呼吸にとって有利なのか不利なのか。呼吸の専門家から見た自転車の呼吸とは筋力と同じくらい大切です。

自転車における呼吸について、スポーツの運動は、動的運動と静的運動に分けられます。静的運動とは、動きは少ないけど筋肉を使う運動です。重量挙げや体操などがこれに当たります。

動的運動とは、大きな動きを伴う運動です。サイクリングは、高度動的・高度静的というところに当たります。自転車はサドルとハンドルで体が固定され、筋力を使ってフォームを維持しつつ、ダイナミックにペダリングしなければなりません。動的要素も静的要素もどちらも高いんです。

静的運動には筋肉量が必要です。動的運動は有酸素能力を必要とします。自転車は筋肉のパワーだけでなく、呼吸にも高度な能力を必要とするスポーツなんです。だからツール・ド・フランスが世界最高峰のスポーツと称されるのでしょう。

他の競技の選手でもトレーニングに自転車を取り入れることは多い。そこにはこのような理由があるのだ。呼吸にも高度な能力を心要とするスポーツということは、もし呼吸法を改善できれば、有酸素能力が向上してパフォーマンスを大幅にアップさせることができる、ということである。今まで無意識に呼吸していた我々には、大きな伸びしろが残されているかもしれないのだ。

呼吸という観点でマラソンと自転車を比較すると面白いことが分かります。まず、呼吸器を、頭の下にぶら下がっている釣り鐘のようなものと想像してください。

自転車の場合、腕と胴体が固定されているので、運動中に呼吸器がグラつくことがありません。呼吸にとって自転車は有利な状況といえます。対してマラソンは上半身が固定されていないため、運動中に呼吸器が上下左右に動いてしまいます。だから呼吸法には気を遣わなければなりません。

マラソンで呼吸法が取り上げられることが多いのは、このような理由によるのだろう。マラソンで呼吸のリズムを意識したほうがいいと言われるのはこのためです。

実は、生理学的には呼吸のリズムを取る必要はないと言われています。リズムに合わせて呼吸をすると、その分力が入ってしまい、自然体ではなくなってしまいますから。

しかしマラソンやジョギングでは呼吸器が縦に横にと揺さぶられるので呼吸が乱れてしまいます。だからリズムを取ったほうがうまく呼吸ができるんです。自転車は呼吸器が固定されているので、本来はリズムをとる必要はないはず。しかし、もしかしたら自転車独自のノウハウがあるのかもしれません。

良い呼吸とは
では、呼吸の良し悪しとは? 呼吸器は、一般的には余力がある臓器と言われています。肺を半分取ってしまっても問題なく生きていけるくらい。健康な人は、たとえマックスパワーで走っても呼吸の限界にはいきません。

呼吸より先に心臓が限界を迎えてしまいます。対して、心拍数は簡単に最大になります。心臓がそれ以上働けない状態になるわけです。そんな状態でも呼吸には余裕があるんです。

ただ、呼吸器系の病気があったり、姿勢によって呼吸が制限されていたりすると、呼吸の障害が出てきます。呼吸の良し悪しを測る1つの目安が換気量(=体に出入りする空気の量)です。換気量が少ないと十分な酸素を取り込めなくなってしまいます。自転車のように高い有酸素能力が必要とされるスポーツでは、換気量をできるだけ多くすることが必要です。


自転車乗りのための筋肉の基礎知識
ロードバイクとは、可能な限り速く、遠くまで走ることができるように進化してきた乗り物である。ロードバイクが速く走れる秘密は、その軽量性や細いタイヤのおかげだと思われがちだが、実は少し違う。

その証拠に、まわりを見回してみれば、ロードバイクを遅く走らせているライダーは大勢いる。ロードバイクに跨っただけで、ただそれだけで速く走れるわけではないのだ。

ロードバイクが速く走れる本当の理由は、効率よく全身の筋肉を動員できるポジションと、そうして絞り出したパワーを効率よく駆動力に変換できる構造にある。

つまりロードバイクとは「速く走れる自転車ではなく、速く走らせてくれる自転車」ということなのである。そして、速く走るためには、人間の側が果たす役割のほうがはるかに大きいのだ。

その意味で、筋肉の使いかたは走りに大きな影響を与える。通常ママチャリを走らせるときの私たちは、ほとんど下半身、それも脚部の筋肉しか使っていない。

たとえママチャリでも、サドルの高さを上げ、ハンドルを低くセットすると、体幹や上半身の筋肉が使えるようになり、時速40kmくらいは軽く出せる。


自転車で最もよく使われる筋肉
正しい高さ。正しいフォームで自転車に乗ってトレーニングをした場合に鍛えられるのは、主に脚の筋肉ですが、お尻や背中の筋肉も影響を受けます。きれいなボディラインも夢ではありません。


最も発達するのはふくらはぎとハムストリングス
自転車でトレーニングをしたとき、一番発達するのは、ますふくらはぎの筋肉、次にペダルを踏む主導的な筋肉である大腿四頭筋、ペダルをおろすときに使われるハムストリングスと大殿筋です。

さらに、ひざの下の骨の前の筋肉です。つまり主に腰から下の筋肉がよく使われます。だからといって、脚が太くなるという心配はありません。むしろ、余分な肉が落ちてすっきりします。

嬉しいのは、お尻の下の大殿筋が鍛えられるため余計な脂肪が落ちること。サドルに座っているためダイレクトにヒップアップするとは言えませんが、お尻の下の余計な脂肪が落ちるので、脂肪の重量で垂れて見えていた部分が引っ張られて上がっていきます。
ヒップアップして見えるわけです。

ただ痩せるだけでなく、しなやかな筋肉が付くと、体は確実に違ってきます。機能的になり、体の動きが美しくなります。これも嬉しいことです。


脚を中心にバランスよく筋肉がつく
このように、自転車では足腰を中心、とりわけ「脚の前の筋肉」が鍛えられるわけですが、フォームをきちっととるだけで、腹筋・背筋を保持する緊張感が働き、自然に腹筋と背筋が締まってきます。

また、腕も軽く前にでているだけですが、軽い緊張感から腕の下の、よくいう振袖になりがちな筋肉をとりあえず締めておいてくれます。この部分の脂肪は、普通の運動ではなかなか落ちません。

脚とカラダの前側の筋肉が鍛えられると同時に、きちんとしたフォームをとることで全身の筋肉が少しずつ締まってきます。これが見た目に美しい体を作る一助になることはいうまでもありません。

もちろん、筋肉がつくことで、基礎代謝量が増え、寝ているときでさえカロリーを消費するようになると、少々食べても肥りにくい体に変化していきます。


体幹の筋肉に着目すれば走りはスケールアップする
「体幹の筋肉」とは、脊柱(背骨)や骨盤に付いていて、肩甲骨、上腕骨、大腿骨などを動かすことのできる筋肉のこと。分かりやすく言うと、腕や脚を根元からブンブンとパワフルに動かすことのできる筋肉ということだ。

これらの筋肉は、総じて長く、太く、パワーと持久力に富んでいる。したがって、ロードバイクを速く、ラクに、しかも長時間走らせるためには、体幹の筋肉をいかに使うかがカギになる。

しかし、体幹の筋肉は、すっかり堕落しきった現代人の生活ではめったに使われることがなく、それを動かすための神経支配も、実際の筋肉の量も実にお寒い限りである。

そこで、眠れる能力を呼び覚ますために、ひたすら「意識する」のである。悪いがこの方法しかない。常に意識して走ることで少しずつ、あまり使わないほうがよい末梢の筋肉から、体幹の筋肉へとシフトしてくる。
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