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トレーニングでからだに起こる障害や病気を部位ごとに詳しく解説

頭部の障害
脳しんとう
脳は重要な臓器で、運動するためにも、試合の戦略を考えるためにも、人間らしく生きるためにも、欠かすことのできない働きをしています。

脳しんとうとは、頭に衝撃を受けることで、意識に変化が起こるものの、出血などの明らかな変化がなく、上瞬交的短時間で回復するものを指します。明らかな異常がないものを脳しんとうと診断するため、このとき脳で何が起きているのか、はっきりしたことはわかっていません。

意識を失ったり、重大な症状は意識障害です。意識障害には、少しボーッとする状態から、意識を失う失神まで、さまざまな程度があります。記憶の障害も重大な症状で、これには2つのタイプがあります。

脳しんとうを起こす前の記憶がしばらくの間失われるのが逆行性健忘、脳しんとう後の記憶が定着せずに記憶されないのが順行性健忘です。
その他、脳しんとう後には、頭痛、吐き気、耳鳴り、抑うつなど、さまざまな症状が生じることがあります。

頭蓋内出血
頭蓋骨の中で発生する出血のすべてを含めて頭蓋内出血といいます。出血する部位によって、石剛莫外出血、石則莫下出血、くも膜下出血、脳内出血などに分けられます。

時間の経過とともに悪化する
頭部に重症を受けた直後から、意識がないとは限りません。最初は応答可能な状態ですが、時間経過とともに悪化し、激しい頭痛、嘔吐、意識消失と、進行する場合があります。これらの症状は、出血の量が増えることにより、頭蓋骨内で脳が圧迫されることによって起こります。出血が少ないと症状の出現が遅れることがありますが、ほとんどの場合、数分から数時間以内に現れます。


頚部の障害
バーナー症候群
頭部から衝突して首が後方や後側方に反らされたとき、肩や腕に、灼熱感あるいは鋭いしびれが走ることがあります。これを、アメリカンフットボールの世界ではバーナー症候群と呼んでいます。バーナーで焼かれるような症状があるところから、こう呼ばれているのです。相撲の世界では「電気が走る」と表現しています。
バーナー症候群自体は、特に心配すべき障害ではありません。

一時的なしびれと脱力
しびれ、感覚の異常、筋力の低下(脱力)などの症状が現れます。ただし、これらは一時的なもので、数分から1時間以内で回復します。
損傷を受けた神経の支配領域に、マヒが起こり、感覚や運動の異常が生じます。どこに異常が生じているかによって、何番目の頚部神経根が損傷を受けたのかを推測することができます


頚髄損傷
頚椎は頭を支えるだけでなく、神経の束である脊髄を保護する役割を持っています。脊髄には腕、体幹、脚に向かう神経が集まっているので、頚椎が骨折や脱臼を起こして頚髄(頚部の脊髄)が損傷を受けると、重大な手足のマヒを引き起こしたり、ときには死亡したりすることもあります。


頚髄のどの位置が損傷されたかによって、発生するマヒの範囲が異なります。多くの場合、両腕と両方の下肢がマヒします。より頭に近い部位で損傷が起こると、延髄にも影響が及び、呼吸のマヒが起きたり、急死したりすることもあります。

腕神経叢損傷
腕神経叢とは、頚椎から出た神経の枝が、肩まで行く途中で複雑に合流したり分岐したりして、つなぎ換えられる部位です。この部分に損傷が起きると、肩や腕のマヒが発生します。頚部の神経根の損傷でも似た症状が現れるため、区別が難しい場合があります。

損傷を受けた神経が支配している筋肉に脱力が起こり、感覚のマヒも起こります。最も多いえきか神経の損傷では、三角筋が動かなくなるため、肩を前や横に持ち上げる動作が難しくなります。また、肩の周囲の感覚が鈍くなります。


肩関節の障害
肩脱臼
肩関節は人体の大きな関節の中では最も動きが大きく、その反面安定性に乏しい構造をしています。
スポーツ中に発生する関節の脱臼は、多くは肩関節に起こります。軽く考えがちですが、きちんと治療しないと、脱臼を繰り返すようになり(反復性脱日)、日常生活にも支障をきたしてしまいます。

腕が動かせなくなる
脱日が起こるときには、関節がはずれる音がして、はずれる感覚があり、とたんに腕が動かせなくなります。脱臼により、肩関節の近くを通る神経や血管が引っ張られるため、手先がしびれることがあります。亜脱臼では、関節がずれる感じがあるものの、自然に戻る感じもあります。


肩鎖関節脱臼
鎖骨と肩甲骨をつないでいるのが肩鎖関節です。肩での衝突や肩からの転倒が起きた場合に、鎖骨の先端が肩甲骨から浮き上がり、突出してしまうことがあります。これが肩鎖関節脱臼です。

痛みと変形が起こる
肩鎖関節部の痛みと変形が起こります。腕を持ち上げようとすると、脱臼した部分に負担がかかって痛むため、腕の動きが制限されます。

鎖骨骨折
鎖骨骨折は、ラグビーやアメリカンフットボールのような衝突の起こる競技、あるいは柔道などの格闘技でよく発生します。また、自転車競技では転倒したときに起こることがよくあります。

痛みと腫れで腕を動かせない
骨折部分に痛みと腫れが生じます。発生直後よりも、数分から数十分後に症状が強くなってきて、腕を動かすことが難しくなります。

腱板損傷
腱板とは、肩関節の安定性を保っているインナーマッスルの腱が、板状になっている部分です。この部分を損傷すると、肩の機能が大きく低下します。

腕を振り上げたときに痛む
腕を振り上げたときに、違和感や痛みがあります。これが最も一般的な症状です。
腱板の損傷が進むと、インナーマッスルの筋力が低下し、肩関節の安定性が失われたり、動きが不正確になったりします。

このような症状があっても、選手たちは痛みが出ないフォームでプレーを続けてしまいます。振り下ろす腕が本来と異なる下がった位置から出ていることに指導者が気づき、障害が発見されることもあります。

腱板が広範囲に断裂すると、腕が上がらなくなることもあります。若い選手では断裂はまれですが、中高年の野球やテニスの愛好家では起こることもあります。


関節唇損傷
関節唇は、肩関節の骨と骨の間に存在する軟骨のクッション組織です。膝関節にある半月板と同じ構造をしています。半月板も関節唇も、本来は関節の動きを助け、衝撃を吸収し、分散することで、関節の表面が傷つかないように守っているのです。
ところが、これらの軟骨のクッションが切れたりすると、逆に関節の表面を傷つけたり、重力を妨げてしまったりする原因となります。

引っかかる感覚や痛みがある
関節唇が損傷を受けると、肩関節の可動範囲が狭くなったり、関節を動かすときに、引っかかるような、つかえるような感覚が起きたりします。当然、痛みも伴います。投球動作では、振りかぶってから腕が後方にねじられるときに、症状が出やすいようです。
そのため、速球が投げられなくなったり、遠投ができなくなったりします。関節唇が骨を支えられなくなると、脱臼しそうな不安感を自覚することもあります。


肘関節の障害
野球肘
広義には、野球で起こる肘の障害を総称して野球肘といいます。しかし、学生や中学生の少年野球選手には特に肘の障害が多いため、これを野球肘と呼ぶこともあります。いずれにしても、いろいろなタイプの障害が含まれます。陸上競技のやり投げでも、同じような肘の障害が発生します。障害の発生する部位から、「内側型」「外側型」「後方型」に分類します。

投球のたびに痛むのが主症状
投げるときに痛みが生じるのが主症状ですが、中には痛みを自が自覚せず、肘関節の腫れや可動制限を先に自覚することもあります。また、障害の起きている部位によって、現れる症状に違いがあります。内側型で成長軟骨の裂離骨折が起きている場合には、投球動作の途中で急性の激痛を感じるのが普通です。

外側型で上腕骨小頭が損傷している場合、変形が起きていると肘関節の可動制限が起こります。また、関節内遊離体ができてしまうと、これが関節の隙間に引っかかり、瞬間的に関節が動かなくなるロッキングという症状が起こることがあります。

後方型では、投球動作の最後に、肘頭部に重い痛みを感じることがよくあります。このタイプは、多くは年長の選手や成人の選手に見られます。

テニス肘
テニスやバドミントンなど、ラケットを握って打つスポーツに共通して発生する、痛みを伴う肘の障害です。ゴルフでも同様の痛みが発生しますし、フライパンを持つ調理師にも起こります。このことから、握って支えるという動作に起因する障害と考えられます。

進行すると日常生活にも支障が
初期の「鄭皆では、ボールを打つときに痛みが出るだけです。しかし、悪化してくると、日常生活の重動作でも痛むようになります。手首を反らせるように力を入れると痛むのです。ひどくなると、 ドアのノブを握って回したり、缶のプルトップを引き上げたりする動作も、痛みのためにできなくなることがあります。


肘脱臼
腕の関節の中では、肘関節の脱臼も少なくありません。肘関節は、上腕骨の先端が尺骨と噛み合った状態になり、機骨は接触する形になっています。したがって、肘関節の脱臼とは、上腕骨と尺骨の歯み合わせが抜けることを指します。
幼児に起こる肘内障は、撓骨の根元が、尺骨とつながっている靭帯から抜けかかる状態で、月瑚脱臼とはまったく別の障害です

時間が経って腫れがひどくなる
肘の痛みと明らかな変形が起こります。
痛みは主に肘の内側に強く出ますが、外側が主になることもあります。
脱日が発生した直後よりも、少し時間が経ってからのほうが、腫れがひどくなります。これは、靭帯や関節包が損傷を受けているために起こる現象です。

尺骨神経障害
尺骨神経は、肘関節の内側にある内側上顆という突起の後ろ側を通っています。この神経が障害されるのが尺骨神経障害です。肘における尺骨神経の通路は、関節の動きによって、神経が骨や周囲の筋肉とぶつかったり、こすれたりしやすく、もともと神経が刺激されやすい部位です。さらに、野球肘などで肘の骨の変形が加わると、神経の通路が狭くなり、ますます神経が刺激されやすくなります。

また、肘の外反角が大きく、X脚のように肘が外側に反っている外反肘の人は、神経が緊張を受けやすい傾向にあります。肘を曲げたときに、神経の脱臼が起こることもあります。

尺骨神経は、手の指の外側の感覚や指の細かい動きを支配しています。そのため、この神経が刺激されると、指に響くような痛みやしびれが起こります。机の角などに肘の内側をぶつけたとき、指に響くような痛みが生じますが、ちょうど同じような症状が発生するのです。肘にも重いような、だるいような痛みが生じます。

また、神経が障害されて指の力が弱くなることがあります。握る力を発揮しにくくなり、ものを落としやすくなります。


手関節、手の障害
コレス骨折
手首の骨折は、子どもと高齢者に多いことがあげられています。よく折れる骨は前腕
の親指側にある桂骨です。特に手首に近い部位の骨折で、車郵到時に手のひらを着くことで発生するものを「コレス骨折」と呼んでいます。

痛み、腫れ、変形が起こる
手首の変形と腫れが現れ、強い痛みを伴います。骨折部分は、末梢側(手先に近い側)の骨が手の甲側にずれるため、フォークのような形に変形します。
転ぶ勢いが比較的軽いと、ずれや変形がほとんどなく、骨折と意識されないこともあります。
手首の手のひら側には正中神経という指の感覚を支配する神経が通っています。その神経が骨折で圧迫を受けると、親指や人差し指がしびれることもあります


舟状骨骨折
手首にある舟状骨の骨折です。転倒して手のひらを着いたとき、子どもではコレス骨折が起きやすいのですが、高校生や大学生など年長の選手では、舟状骨骨折が発生します。この骨折は診断がつきにくく、骨が癒合しにくいことが知られています。

骨折線が写らないこともある
骨折が発生してすぐは、レントゲン撮影で骨折線がはっきり写らないことがしばしばあります。そのため、「異常なし」と診断され、放置することになってしまいます。1~ 2週間後には骨折線が明らかになるので、舟状骨骨折の疑いがある場合には、必要な固定を行ったうえで、再度レントゲン撮影を行います。

痛みは軽いことが多いのですが、指で押すなどして、慎重に痛む部位を調べます。
舟状骨の位置を把握していれば、この骨折の可能性に気づくことができます。
早期に診断するためには、MRIやCTによる検査が行われます。


TFCC損傷
TFCCは三角線維軟骨複合体の略称です。手首の関節には、尺骨の先端と手の骨との間に、軟骨でできた三角形のクッション糸島織があります。これが三角線維軟骨複合体です。名前が長いので、英語名の略称であるTFCCがよく使われています。TFCCの損傷は、急性のケガとしても発生します。

痛みと物が挟まった感覚
原因となるような動作を行うと、患部が痛んだり、物が挟まっているように感じられたりします。急性のケガで発生した場合には、痛みだけでなく、患部の腫れも伴います。
以上のような症状のため、日常生活において、コップを持ったり、 ドアのノブを回したりする動作ができなくなることもあります。


突き指
突き指は、学校スポーツで球技を行ったときなどに、非常に多く発生しています。
しかし、突き指によってどのようなことが起きているのかについては、あまり知られていません。いまだに「引っ張っておけばよい」という認識の指導者もいるような状態です。
突き指とは、ボールや他の選手の体などにより、指に強い力が加わって起こる障害の総称です。指に何が起きているかによって、緊急の対応も、治療も、治るまでの期間も異なります。

外力が加わった関節に、痛みや腫れが起こります。ときには脱臼や骨折が起こることで、変形が見られることもあります。骨折や靭帯損傷が起きている場合には、時間が経つと皮下出血(内出血)が目立つようになります。
特に突き指が起こりやすいのは、親指のつけ根の関節と、人差し指からまでの第2関節です

槌指
槌指という病名は、損傷を受けた結果、指の第1関節だけが曲がり、槌のような形の独特の変形をきたすことからつけられています。ところが、損傷の直後は典型的な形になっていないことがあります。そのため、槌指と気づかず、見逃されてしまうことが少なくありません。
この障害は、突き指の1つのタイプと考えることもできます。通常の突き指とは損傷される部位が違い、損傷される組織が違っています。

指を伸ばすことができない
患部の痛みと腫れが起こりますが、腫れはあまり目立たないことが多いようです。
骨がはがれている場合には、皮下出血が見られます。最も典型的な症状は、指先の関節を完全に伸展させることができなくなることです。そのために、指先だけが曲がった独特の形になります。腱が切れたり、腱付着部の骨が剥がれたりしていなければ、通常、指をこのような不自然な形に曲げることはできません。

ただし、損傷を受けた直後は、このような変形は目立たないことがあります。指を曲げる腱で引っ張られることにより、時間の経過とともに、徐々に変形が進んでいくことが多いのです。

手関節部腱鞘炎
手首の周囲には多数の腱が通っています。それぞれの腱は、力を発揮したり、手首の関節を動かしたりしたときに、浮き上がってしまわないように、骨に留められています。そのため、大きな力のかかる手首の動きや、繰り返される動きによって、腱と腱鞘には、圧迫や摩擦などが加わります。こうして発生するのが手関節部腱鞘炎です。

原因となる動作によって、炎症の起きる部位が決まっています。発生しやすい部位は、手首の甲側、手のひら側、親指側です。原因や治療は、部位別で考える必要があります。

負担のかかる動作で痛む
腱鞘に負担のかかる動作を行うと痛みます。ケルバン腱鞘炎では、手首を親指側に曲げる動作で痛みが生じます。腱鞘炎が長期化すると、腱鞘が腫れて腱の動きが悪くなります。それにより、引っかかり感や、引っかかりのあとに急に動く感じ(弾発現象)を自覚するようになります。

バネ指
曲げた指を伸ばそうとするとき、引っかかった状態になり、さらに力を加えると、弾けるようにして伸びる、弾発現象が生じます。指の根元を通る指を曲げるための屈筋腱が腱鞘炎になり、腱鞘が狭くなることで起こります

バネ仕掛けのような弾発現象
指の曲げ伸ばしがスムーズにいかず、引っかかる感じがあります。また、腱鞘に沿って腫れや圧痛があります。曲げた指を伸ばそうとするとき、引っかかってある角度で止まり、さらに力を入れると、弾発現象を伴って伸びます。

指血行障害
野球選手の中には、冬になると指先がしびれたり、指の色が白くなったりする人がいます。このような現象は、ボールを受けるほうの手に多く発生します。

指が白く冷たくなる
循環する血液が少なくなるため、指先が冷たい、しびれる、色が白いなどの症状が見られます。これらの症状は、特に気温の下がる冬に明らかになり、夏はほとんど気づかないこともあります。

各指に血液を送る2本の血管のうち1本だけが詰まっても、指が壊死することはありません。ただ、血液不足の状態が続くと、指の皮膚や骨が弱くなったり、指先が細くなったりします。また、爪のひび割れも治りにくくなります。


体幹の障害
肋骨骨折
肋骨は胸郭という骨組みを構成する骨です。胸郭は、胸部の重要な臓器である心臓や肺を保護する役割を果たしています。肋骨は左右とも12本ずつあり、前方は中央で胸骨に連結し、後方は中央で脊椎(胸椎)に連結しています。
呼吸に伴って肋骨は全体が上下し、本黄隔膜とともに、肺の体積を大きくしたり、小さくしたりする働きをしています。

肋骨はすべてが骨になっているわけではなく、前方部分は軟骨です。それが加齢によって骨化していき、高齢者では全体が骨になっています。肋骨自体はあまり頑丈な骨ではなく、細くて弾力性があります。しかし、弾力性の限界を超えて力が加わると骨折を起こします。

肋骨骨折で重要な点は、折れた肋骨の先端が肺を傷つけていないか、ということです。肺が損傷を受けた状態を「気胸」、胸郭内に血液がたまった状態を「血胸」といいます

呼吸困難や血痰に注意する
骨の折れている部分に痛みがあります。
これが主症状です。肋骨は呼吸するときに動くので、呼吸のたびに痛み、深呼吸は痛みのためにできなくなります。咳やくしゃみは強烈な痛みを伴います。

肋骨の痛みとは別に、呼吸困難が明らかであったり、血痰が見られたりする場合には、肺が損傷を受けている可能性があります。気胸や血胸では、胸郭に空気が入って肺の膨らむスペースがなくなるため、呼吸困難が生じます。


胸部打撲(心臓しんとう)
スポーツ中に起こる胸部の打撲は、肋骨や胸骨の骨折以外に、もっと重大な事故を引き起こすことがあります。子どもに見られる心臓しんとうと呼ばれている疾患がそれで、発生すると心臓停止が起こり、急死する危険性があります。

子どもの事故として報道され、この疾患自体の認知度が上がってきています。心臓しんとうのような疾患があることを知っていれば、発生した場合でも、ただちに意識状態や脈を確認することで、必要となる対応をとることができます。

意識を失い、脈が触れない
胸部にボールが当たったあと、意識を失って倒れます。そのときに脈を調べても、心室細動が起きているため脈は触れません。原因がなんであれ、意識がなく、脈を触れなければ、心肺蘇生が必要です。


腹筋損傷
腹筋も骨格筋である以上、肉ばなれのような障害が発生することは避けられません。腹筋は体幹の支持において重要な機能を果たしているので、損傷によって重大な影響が現れます。腹筋は、中央を縦に走る腹直筋と、左右にある腹斜筋群と腹横筋に分けられます。これらの筋肉によって、腹部の前壁と側壁が守られているのです。腹直筋は、胸郭と骨盤(恥骨)を結び、収縮することで両者を近づける役割を果たします。

腹斜筋群は、外腹斜筋と内腹斜筋に分けられます。外腹斜筋は、肋骨から中央へ下降し、腹直筋の筋鞘や恥骨に向かいます。内腹斜筋は、腰部の筋膜から中央へ上行し、大部分が腹直筋の筋鞘に向かいます。腹斜筋がそれぞれ斜めに走るのに対し、腹横筋は横に走り、これらが共同して腹部の側壁を保護しています。
これらの腹筋の中で、明らかな筋損傷を起こすのが多いのは腹直筋です。

いろいろな動作で痛む
他の部位に起こる筋損傷と同じで、筋肉の損傷部分に痛みが生じます。これが主症状です。腹筋群は、呼吸や日常生活動作で無意識のうちに使われているので、損傷するといろいろな動作で痛みが生じます。
慢性的な経過をたどる場合には、痛みは急性の場合ほど強くありません。そのため、損傷が治る前に運動してしまい、患部に固いしこりができることがあります。


腰椎分離症
腰椎の後方部分で疲労骨折が起こり、進行すると骨が割れた(分離した)状態になるのが腰椎分離症です。
以前は腰椎の後方が割れた状態になってから発見されていたため、先天性の可育旨性も議論されていました。ところが、スポーツ選手に明らかに多いこと、痛みの出始めの時期にはレントゲン撮影で異常がないのに、しばらくすると割れた部分が見つかることなどから、大部分は後天的におこることがわかってきました。

最近では、まず疲労骨折として発生し、それが治らず、進行して完全に分離してしまったものが、レントゲン撮影で発見されているのだと考えられています。

漠然とした腰痛
腰痛が起こります。腰を反らせたり、ひねったりしたときには、損傷部位に力が加わるため、痛みが誘発されます。しかし、それ以外のときには、漠然とした腰痛を感じるにすぎません。そのため、重大視されないままスポーツを行ってしまい、進行させてしまうことがあります。


椎間板ヘルニア
椎間板は、椎骨と椎骨の間にある特殊な軟骨のクッション組織です。この椎間板が適度に変形することで、脊椎の動き(屈曲、進展、側屈、回旋)が可能になります。しかし、椎間板に許容範囲を超える強い力が加わると、椎間板の損傷が発生します。椎間板が損傷を受け、後方に飛び出してしまうのが沐佳間板ヘルニアです。

椎間板が後方に飛び出すと、脊髄が通っている脊柱管内にはみ出し、脊髄の神経を圧迫します。それによって、下肢のしびれなどの神経症状が現れることがあります。
ヘルニアとなった椎間板が、すべて症状を引き起こすとは限りませんが、椎間板の本来の機能が失われているか、低下していることは確かです。

典型的な症状は2つあります。1つは腰痛。もう1つは、突出した椎間板に圧迫されて起こる神経のマヒ症状です。どこにマヒが起こるかは、ヘルニアの発生した部位によって異なります。

ヘルニアを起こす椎間板は、第4腰椎と第5腰椎の間の椎間板が最も多く、その場合に影響を受けやすいのは第5腰椎神経根です。ここが圧迫されると、坐骨神経痛、下腿の外側や足の甲の知覚低下、足首を反らせる力の低下などが起こります。

ほかには、第5腰椎と仙骨の間の椎間板も、ヘルニアが比較的起こりやすい部位です。この部位の椎間板ヘルニアでは、足の裏やふくらはぎの知覚低下、足首を下に向ける力の低下、アキレス腱反射が弱くなるなどの症状が現れます。

腰痛症
腰痛の中には、腰椎分離症や椎間板ヘルニアのように、明確な診断名をつけられないものが少なくありません。そうした原因を特定できない腰痛に対して、腰痛症というあいまいな病名が使われます。

腰の痛みは、腹部臓器や骨盤内臓器の病気でも起こります。女性では生理痛の症状として腰が重だるくなることがありますし、子宮や卵巣の病気で腰痛が出ることもあります。ここでは、整形外科的な原因による腰痛について解説します。整形外科的な腰痛は、スポーツ選手では経験しない人のほうが少ないほど一般的です。

原因により痛みの出方が異なる
腰部に痛みがあることが前提ですが、原因によって、どのような動作で痛みが出る
か、それ以外の症状があるかどうか、などが異なります。


骨盤・股関節の障害
骨盤裂離骨折
成長期の骨には成長軟骨があります。この部分が筋肉や腱に引っ張られると、その部分で骨が剥がれてしまう「裂離骨折」という障害が発生します。骨盤の骨にも成長軟骨があり、全身の中でも裂離骨折が起きやすい部位とされています。

成長軟骨は骨を成長させて大きくする働きがありますが、ここは成長期の骨のウイークポイントでもあります。また、骨が成長する時期は、骨の長さが伸びることによって、相対的に筋肉は短くなってしまいます。そのため、筋肉は常に緊張した状態を強いられ、骨端核を引っ張ることになります。その引っ張る力も裂離骨折を引き起こす原因となります。

このような状態は、最も身長が伸びる中学生によく見られるもので、骨盤裂離骨折もほとんどは中学生におこります。ただし、成長が早い場合には、小学校高学年で発生することもあります。

裂離骨折の生じている部位に強い痛みを感じます。ときには「ボキッ」というような骨折音がして、走ることができなくなることもあります。


梨状筋症候群
梨状筋という名前は、一般的にはあまり知られていませんが、最近のスポーツ界では、この筋肉に関係する障害が増加しています。梨状筋は臀部にある筋肉です。臀部の大部分は大臀筋に覆われていますが、それよりも深い部分に位置しています。

股関節を外側に回す(外旋)働きを受け持っています。立った姿勢でつま先や膝を外側に向ける運動が外旋です。また、股関節の後方の壁として、関節を安定させるインナーマッスルとしての働きもしています。この梨状筋の下側を坐骨神経が通っています。坐骨神経は狭い隙間を通って大腿部へと下降していくため、梨状筋が坐骨神経を圧迫してしまうことがあります。このようにして坐骨神経に症状が生じる場合を、梨状筋症候群と呼んでいます。

臀部・大腿後面の痛みやしびれ
患側の臀部から大腿後面にかけて、痛みがある、重だるい、しびれる、脚に力が入らないといった症状が現れます。椎間板ヘルニアで見られるような典型的な筋力低下や知覚低下は、多くの場合見られません。

その他、走っているときに力が抜ける、不安定な足運びになるなど、選手の訴えは多様です。いすに長時間座っていると症状が出て患部を浮かせたくなる、という訴えもしばしばあります。

恥骨結合炎
恥骨結合とは、骨盤の前方で両側の骨盤の骨が結合する部分です。骨盤のうち、左右の恥骨という部分が線縦組織によって連結された構造になっています。向かい合う骨同士の間で、動きが起こる関係を「関節」、ほとんど動かないように制動されている関係を「結合」といいます。

恥骨結合は基本的には動きませんが、唯一の例外が出産時で、ホルモンの働きで恥骨結合の線維組織が柔らかくなり、赤ちゃんを体外に送り出せるように広がります。本来なら動かない部位が、強い力を受けて動かされるとケガになります。制動している線維組織や、線維組織の付着している恥骨に損傷が起こる恥骨結合炎です。

恥骨には内転筋が付着しています。内転筋は、股関節を内転(脚を閉じる)させる働きをする筋肉ですが、股関節の屈曲(脚を前方に振る)、伸展(脚を後方に振る)など、多くの動作で補助的に働いています。

圧痛の有無が重要
恥骨結合に痛みが生じますが、初期には、大腿部のつけ根の重さや張りを訴えることが多く、恥骨結合の痛みそのものを自覚することは少ないようです。
しかし、初期でも恥骨結合を押すと明らかな痛みがあります。この圧痛の点検が診断する上で重要な価値を持ちます。

股関節脱臼
股関節は、骨盤の両側にある寛骨臼蓋という深いくぼみと、大腿骨の上端の丸い骨頭で構成される関節です。深く組み合っているため、非常に安定しています。また、周囲には、臀筋、ハムストリング、大腿直筋、内転筋など、強い力を発揮する大きな筋肉がそろっていて、股関節をしっかり取り囲んでいます。

そのため、肩関節に、簡単に脱臼が起きることはありません。ただし、股関節に加わる力が非常に強い場合や、股関節がはずれやすい方向に力が働いた場合には、脱臼が発生することがあります。

股関節から臀部にかけて強い痛みが起こり、脱臼感(関節がはずれたという感じ)があります。股関節を曲げた位置で脚を動かせない状態になります。体重をかけることも、いつも通りに股関節を動かすこともできません


大腿の障害
肉ばなれ
肉ばなれを起こした筋肉では、筋線維が腱や腱膜との連結部で断裂しています。画像検査の進歩によって、それが明らかになってきました。

大腿部は肉ばなれが起こりやすい部位で、特に大腿部の後ろ側にあるハムストリングは、最も肉ばなれを起こしやすい筋肉です。ハムストリングは、外側の大腿二頭筋、内側の筋肉から構成されています。これらは、膝関節と股関節を越える2関節筋(厳密には大腿二頭筋の短頭のみ1関節筋)で、膝を曲げる、大腿部を後方に引く(股関節を伸展させる)という動きは共通しています。

しかし、詳しい研究はまだ進んでいません。
大腿直筋も肉ばなれが多い筋肉です。大腿部の前側には大腿四頭筋という大きな筋肉がありますが、その中央に位置するのが大腿直筋です。大腿直筋は、大腿四頭筋の4つの筋肉の中で、唯一、膝関節と股関節を越えて働く2関節筋です。

鋭い痛みが突然発生する
全力疾走をしているときなどに、突然鋭い痛みが起こります。ときには「ブツッ」という断裂音が聞こえることもあります。痛みによって筋力が発揮できず、ストレッチングを行うのも困難になります。

筋挫傷
筋挫傷は、筋肉の外からの力によって、筋線維が押しつぶされる損傷です。コンタクトスポーツでは衝突は日常茶飯事なので、アメリカンフットボールのように防具として衝撃を吸収させるパッドを装着するスポーツもあります。

筋挫傷を受けやすいのは、衝突を受けやすい部位にある筋肉です。臀部、大腿部前面、下腿部前面。後面などの筋肉によく見られます。大腿部前面は頻発部位といっていいでしょう。コンタクトスポーツでは後方からのタックルは反則になることがあるため、前方への衝突が多くなります。ただし、打球や投・送球はさまざまな部位に衝突します。衝突による筋挫傷では、筋線維だけでなく血管も損傷を受け、ときに大量の出血が起こることがあります。

骨がある部位では、衝突の力によって筋肉が骨に押しつけられ、筋挫傷が発生します。このようにして骨に隣接した部位で出血すると、反応性に骨が作られる現象(骨化)が起こることがあります。このような状態を骨化性筋炎といいます。

筋肉の痛み、腫れ、脱力
衝突を受けた筋肉に、痛み、腫れ、脱力などの自覚症状が現れます。
筋肉内で出血が起こり、血液が筋肉内にたまる血腫ができると、著しい腫れや液体による波動が生じます。

骨化性筋炎を起こした場合には、筋肉の動きが制限され、関係する関節の動きが著しく低下します。
筋挫傷で膝が曲がらなくなったというように、関節の動きが著しく低下している場合には、骨化性筋炎を疑う必要があります。

疲労骨折
大腿部は疲労骨折を起こしやすい部位です。疲労骨折はランニングをする人に多いのですが、ランナーの疲労骨折としては、下腿(脛骨、誹骨)、足(中足骨、舟状骨)に次ぐ発生件数が見られます。
発生部位は、大腿骨の頚部、骨幹部、顆上部の3カ所に大別されます。疲労骨折がどこに起こるかによって、治癒までの期間や危険度に違いがあります。

場所がはっきりしない痛み
鼠径部や大腿部に、場所がはっきりしない漠然とした痛みを感じることが多いようです。そのため、大腿骨の疲労骨折と診断がつくのが遅くなる傾向があります。
ランニング中の着地で力が入らないなど、特異性のない症状が現れることも初期にはしばしばあります。


膝関節の障害
内側側副靭帯損傷
膝関節の障害では、球技を中心に靭帯損傷が発生しやすく、特に重要視されています。中でも発生件数が多いのは、膝関節の内側を支持している副靭帯の損傷です。
この靭帯は膝関節の内側の皮下にあり、関節包と接しているので、痛みや腫れを直接観察しやすいという特徴があります。副靭帯損傷には、合併損傷として、半月板損傷や十字靭帯損傷など、関節内部の損傷が起こることもあります。

膝の内側の痛みと腫れ
膝関節の内側に痛みと腫れが現れます。
また、膝関節が外反する方向に力が加わると、不安感や不安定感を感じます。
靭帯に沿って内出血が見られることもあります。


前十字靭帯損傷
膝関節には、関節の周囲だけでなく、関節内部にも靭帯が存在し、関節の安定化に役立っています。特に方向転換のような複雑な動きは、関節内の靭帯による支持性がないと行うことができません。

前十字靭帯損傷は、スポーツ医学の発展を象徴する歴史を持っています。半世紀前には、関節の内部を検査する手段がありませんでした。そのため、膝のケガをしたあと、関節の不安定性が残る原因が解明できなかったのです。

しかし、関節鏡が発達し、関節を大きく切開することなく内部を検査できるようになったことで、前十字靭帯損傷と膝の不安定性との関連が明らかになってきました。それにより、診断方法、治療方法が進歩したのです。診断には、MRIの進歩も役立っています。

損傷を受けた直後は、前十字靭帯そのものの痛みは軽いのですが、関節内に血液がたまると徐々に関節の腫れや曲げにくさを自覚するようになります。これらの急性症状が落ち着いたあと、いろいろな動作をしてみると、ダッシュなどの直線方向の運動は問題なくできますが、急停止や方向転換などで膝のぐらつきを感じます。


後十字靭帯損傷
後十字靭帯は、前十字靭帯と同様に膝関節の内部に存在する靭帯です。この靭帯は膝関節の後方にあり、前方から見ると、関節の内側上方からやや外側下方へとつながっています。

主な機能は、大腿骨と脛骨をつなぎ、脛骨が後ろにずれないように支持することにあります。回旋方向に対して支持する役割は、前十字靭帯ほどではないようです。

謳骨が後方にずれる
関節の内部にある靭帯なので、損傷を受けた直後には、あまり特徴的な症状は現れません。少し時間が経過して、関節内に出血した血液がたまってくると、徐々に関節が腫れ、曲がりにくくなってきます。これは前十字靭帯損傷の場合と同じです。
急性期を過ぎて運動を始めると、ストップするときに、膝が前後にぐらつくような不安定性を感じるようになります。

また、膝を立てた状態で座ったときに、骨が後ろに落ちたように見えるのが後十字靭帯損傷の特徴です。このとき、後十字靭帯の支えがなくなった脛骨は、実際に後方にずれています


半月板損傷
半月板は、膝関節内部の大腿骨と脛骨の間に介在するクッション組織で、線維軟骨でできています。半月というより、三日月を少し太くしたような形をしていて、膝の内側(母指側)と外側に1個ずつ存在しています。

半月板の役割は、膝関節に加わる衝撃を分散することと、関節表面の接触面積を広くして関節を安定させることです。高齢者では、関節軟骨だけでなく半月板も摩耗し、働きが失われていることがあります。

若い選手でも半月板がなくなると関節軟骨にかかる負担が増え、関節軟骨がすり減る変形性膝関節症が発生しやすくなります。二足歩行の人間では、片足に体重の数倍から10倍以上の負荷がかかることがしばしばあり、半月板には強い力が加わります。

半月板が生まれつき大きく、中央の穴の部分がほとんどない半月か満月のような形をしている半月板を円板状半月板といいます。円板状半月板では、普通の動きでも、半月板を損傷させるような力が加わってしまうため、膝の捻挫などのきっかけがなくても、損傷が発生します。

曲げ伸ばしで膝の内部が
痛む、曲げ伸ばしできない膝に体重がかかっているときや、膝を屈伸させるときに、膝の内部に痛みがあり、屈曲制限や仲展制限などの可動域制限があります。これらが、半月板損傷の典型的な症状です。膝がある角度で動かなくなり、屈曲も伸展もできなくなるロッキング現象が起こることもあります。


タナ障害
膝関節の内部には、関節内の空間である関節腔を仕切る膜状の壁がいくつかあります。この壁を滑膜ヒダといいます。膝関節の内側から下方にかけての部分で、大腿骨と膝蓋骨の間に見られる滑膜ヒダは、全人口の3~ 5割に存在します。この滑膜ヒダは、関節鏡で観察すると物を乗せる棚のように見えるため、タナと呼ばれています。

タナの幅は個人差が大きく、痕跡程度のわずかなものから、関節腔を仕切ってしまうものまでさまざまです。膝関節を屈仲する際、特に浅く曲げた状態から伸ばすときに、タナは大腿骨の下端の膨らみ(内顆)を乗り越えます。

膝蓋骨の内側下方が痛む
膝関節前方の膝蓋骨の内側下方に痛みがあり、特に運動時に痛みます。長時間座っているときに違和感を覚えることもあります。ランニング中や膝を伸ばそうとするときに、タナがすれる感触を自覚する人もいます。


軟骨損傷
膝関節は下肢の最も重要な関節で、高い負荷がかかります。そのため、体重を受ける関節表面の軟骨は、損傷が起きる危険性が高くなります。膝関節を構成する大腿骨、座骨、膝蓋骨が互いに向かい合う表面には、他の関節に比べて厚い関節軟骨が存在し、関節に加わる力を吸収分散する働きをしています。しかし、関節軟骨の許容範囲を超えた力が加われば、関節軟骨に損傷が起きます。

靭帯損傷や半月板損傷を起こすような負荷が加わったときに、それに伴って軟骨損傷が起きることもあります。損傷が徐々に蓄積し、正常な軟骨がすり減ると、関節の滑らかな動きが失われ、衝撃を吸収分散する機能が低下してしまいます。この状態になると、軟骨が成ることで骨への負荷が増加し、軟骨の下にある骨が周囲に突出する変化を起こすようになります。このようにして起こる関節の障害を変形性関節症と呼びます。

このような変化は、通常は高齢になってから発生しますが、スポーツ選手では、軟骨損傷のために、若い年代で変形性関節症になることがあります。

熱感、腫れ、関節水腫
関節内で損傷がおきたことにより、それに伴って炎症が生じます。熱感、腫れ、関節水腫が、代表的な関節炎の症状です。関節炎症状が重い場合には、関節を曲げにくくなります。

膝蓋腱炎
膝蓋腱炎は昔から「ジャンパー膝」と呼ばれ、ジャンプすることが多い競技の選手に多いことが知られています。バスケットボール、バレーボール、陸上競技などでは、まさにジャンプすることによって、このケガは発生します。

最近は、ランナーにも同じ症状を持つ人がしばしば見られるようになり、ランニングのトレーニングを行う多数のスポーツで、膝蓋腱炎が発生していることが知られてきました。ランニングで膝蓋腱炎が起こるのは、小さなジャンプと着地を繰り返すのと同じだからと考えられます。

膝蓋骨の下側の痛みと腫れ
膝蓋腱炎の大部分では、膝蓋骨のすぐ下側に痛みと腫れが現れます。初期の「鄭皆では、運動時や運動後の痛みが主症状で、腫れは見られません。変化すると、腱の損傷に対する反応として、徐々に腫れが現れるようになります。痛みが強い場合には、運動後に膝を曲げる動作、立ち上がり、階段の上り下りなどが苦痛になります。


鵞足炎
膝の周囲には筋肉につながる多くの腱があり、骨に付着しています。中でも膝の内側には、内側ハムストリングや内転筋の腱が集まっています。この部分に繰り返し負担がかかると、腱と骨がすれ合ったり、腱同士がすれ合ったりして炎症が発生します。腱が集まっている部分を後方から見ると鵞鳥の足に似ていることから、この部分の炎症を鵞足炎と呼びます。

膝の周囲に発生する腱の損傷の中で、それほど頻度が高いわけではありませんが、スポーツの動作や脚の形と関連するケガとして再発予防を考えるべき損傷です。

膝の内側が痛む
膝の内側から後ろ側にかけての痛み、特に運動したときに起こる痛みが特徴です。
引っかかるような、すれるような痛みを感じます。膝の内側に腫れが見られることもあります。炎症が悪化して強くなると、膝を伸びた位置から曲げようとすると、切れるような痛みを感じることもあります。


腸謳靭帯炎
腸胚靭帯は大腿部の外側を覆う幅広い膜状の組織です。靭帯という名前がついていますが、実は筋肉につながる腱です。つながっている筋肉は大腿筋膜張筋で、骨盤の側方のやや前方に位置しています。
大転子付近から下はすべて腱なので、筋肉の長さの割に、腱が非常に長い特殊な形をしています。

腸胚靭帯炎は摩擦によって起こり、痛みが発生する部位が2カ所あります。1つは膝で、もう1つは大転子部です。いずれもランニングのような繰り返し動作により、骨と腱がすれ合い、摩擦によって腱が炎症を起こします。大転子部に比べ、膝での発生が圧倒的に多いため、腸胚靭帯炎といえばふつうは膝の炎症を指します。もっとも、炎症を起こすのは腸胚靭帯そのものではなく、その裏側にある滑液包という組織です。

膝を伸ばすときに痛む
ランニング中の接地脚が、曲がった状態から伸展されていくとき、膝の外側に痛みやきしみを感じます。ランニング以外では、ウェイトトレーニングでスクワットなどの際に、同様の痛みを生じることがあります。自転車ではあまり痛みは出ないようです。

オスグッド病
成長期の骨格には成長軟骨が存在するため、成長軟骨に関係した特有のケガが発生します。オスグッド病はその代表的なもので、スポーツをする少年によく発生します。
月整骨の成長軟骨は膝関節の直下から前下方に伸びています。膝蓋腱付着部はちょうど前下方に伸びた部分にあり、ここが引っ張られることで痛みや変形を生じるのがオスグッド病です。

運動時に膝の前下方が痛む
運動するときに膝の前下方にある膝蓋腱付着部が痛みます。また、その部分に腫れや突出が見られます。まれに、骨端核が完全に剥がれる裂離骨折となることがあり、この場合には非常に強い痛みが起き、歩行困難となります。成長軟骨が完全になくなり、大人の骨格になれば、進行することはありません。ただし、分離した骨のかけらに痛みや炎症が起こることがあります。

離断性骨軟骨炎
膝関節の骨の表面を覆っている関節軟骨の厚さは、成人で3 mmほどあり、他の関節より厚くなっています。
子どもでは、成人に比べてさらに厚くなっています。
この関節軟骨と、その下層にある骨の一部が、一体となって剥がれることがあります。これが離断性骨軟骨炎で、子どもの膝関節に発生します。

母床から完全に剥がれ落ちてしまった場合には、それが関節の中を移動することになります。これを関節内遊離体、あるいは関節ねずみと呼んでいます。
離断性骨軟骨炎は、スポーツとはまったく関係なく起こることもあります。ある種の内分泌の病気と関連して発生するという報告もあります。
また、スポーツをする子どもに発生する場合も、原因がはっきりしないことがあります。

関節の腫れ、水腫、熱感
母床と離れていないような初期の状態では、特異的な症状はありません。中学生以下で、原因のはっきりしない関節炎(関節の腫れ、水腫、熱感)が起きているときには、このケガがかなり含まれていると考えられます。母床から離れて関節内遊離体になっている場合には、運動などで膝の関節の角度が変化していると、さまざまなところにはさまり、急に関節が重力かなくなることがあります。


骨疾走型疲労骨新
脛骨の後方の骨皮質に発生する疾走型疲労骨折は、全身に起こる疲労骨折の中で最も多いものです。年齢では16歳(高校1年生)に最も多く起きていますが、発生する年齢層は非常に幅広くなっています。雁骨の膝に近い1/3部位や、足関節に近い1/3部位に多いといわれていましたが、実際にたくさんの疲労骨折を検討してみると、特にどこに多く発生するということはありません。どこにも起こり得ると考えるほうがよいでしょう。

すねの内側から後方が痛む
走っているときに、すねの内側から後方にかけて痛むのが初期症状です。やがて、痛む部分に腫れや隆起が現れてきます。シンスプリントでも似た位置に痛みが起こりますが、疲労骨折による痛みは痛む部位が限定しており、上下にそれほど広がりません。


脛骨跳躍型疲労骨折
脛骨に発生する疲労骨折ですが、疾走型が軽骨の後方に起こるのに対して、田麗型は脛骨前方の骨皮質に発生します。
脛骨はわずかに前方にふくらんだカーブを描いているため、上下からの負荷を受けると、月墾骨の前方は骨がたわむことによって張力を受けます。つまり、骨の組織としては、引き裂かれるような負荷を受けることになるのです。そのため、疲労骨折を起こした部位の癒合が進まず、治療に難渋することがあります。

脛骨前方の中央付近が痛む
主な症状は、運動時に起こる骨の前方の痛みです。安静にしているときや軽い運動では、ほとんどの場合、痛みは出ません。患部に腫れや骨の隆起が感じられることもあります。


シンスプリント
シンスプリントはスポーツの現場では非常に多く見られるスポーツ障害ですが、必ずしも正しく理解されていません。
「脛骨の内側後縁の下から1/3から1/2の範囲に痛みを有する慢性障害」と定義します。すねの内側が痛む障害で、痛む範囲もほぼ決まっています。

また、下腿三頭筋を覆う筋膜と、脛骨の骨膜との連結部付近の損傷が、シンスプリントの本態であると思われます。初心者に多く、 トレーニング初期の春先に多い、再発も多いということがあります。シンスプリントと脛骨の疲労骨折は、類似したケガ、あるいは同じケガだと誤解されていることがよくあります。

すねの内側が痛む
運動したときにすねの内側が痛むのが主症状です。安静にしているときや、日常生活動作では通常は痛みませんが、圧迫が加わることで痛むことはあります。

コンバートメント症候群
発生機転
下腿には、圧骨と勝骨という2本の骨が内部に存在し、その周りを、筋膜に囲まれた筋肉のグループが取り巻く構造になっていくつかの区画(コンパートメント)に分けられています。このため、打撲などで内出血を起こしたり、疲労などで筋肉が腫れたりすると、区画の中の圧力(内圧)が高くなってしまい、さまざまな症状を起こします。これをコンパートメント症候群といいます。


慢性コンパートメント症
運動中にコンパートメントの場所に一致した筋肉痛、特に締めつけられるような痛みが峙徴です。ちょうど血圧計のマンシェットを長時間巻いて血流を止めたときの痛みと同じです。運動を中断すると痛みは徐々に軽減し、安静時には特に異常は感じられません。しかし、長期化すると、コンパートメントを通過する神経の圧迫症状(前方コンパートメントの場合では足や背のしびれ、知覚低下)や脱力などが現れます。
急性コンパートメント症候群では激しい痛みが起こり、コンパートメント内の筋肉を動かせないほどの苦痛が発生します。

テニスレッグ
肉ばなれは、すでに解説したように、大腿部に最も多く起こりますが、その次に多く生じる部位がふくらはぎです。
ふくらはぎの筋肉は、ヒラメ筋と誹腹筋で構成(これらをまとめて下腿三頭筋と呼ぶ)されています。そのうち、深層にあるヒラメ筋を覆うようにして位置する誹腹筋は、膝関節と足関節という2つの関節を越えて、大腿骨からかかとの骨に付着しています。肉ばなれを起こしやすい特徴を持っている筋肉です。

テニスのプレー時にしばしば発生することから、昔から腹筋の肉ばなれは、テニスレッグと呼ばれていました。つまり、ここで紹介するテニスレッグは、腹筋の肉ばなれを意味します

急激な痛みが突然起きる
ほかの部位の肉ばなれと同じように、動作中に急激な痛みが発生し、プレーの続行が不可能になります。ときには筋肉がつったような状態がおこることもあります。また、誹腹筋は、起立して、歩行する際に必ず使う筋肉です。このため、日常の生活動作においても痛みを感じることになります。

アキレス腱炎、腱周囲炎
アキレス腱のトラブルはあらゆるスポーツのランニング動作やさまざまなフットワークで発生する重要な問題です。アキレス腱は、ふくらはぎの誹腹筋とその深層にあるヒラメ筋(両者を合わせて下腿三頭筋と呼びます)の腱が合わさってできていて、人体の中でも最大の腱といえます。通常、腱の周囲は腱鞘という鞘で包まれ、なめらかに動くようになっていますが、アキレス腱には腱鞘はなく、パラテノンという膜で包まれています。

アキレス腱の障害は大きく分けて、腱鞘炎と同様にパラテノンにおこるアキレス腱周囲炎、腱そのものに炎症が発生するアキレス腱炎、アキレス腱とかかとの骨との摩擦や衝突を緩和する滑液包に起こるアキレス腱付着部炎の3つです。

体が温まると痛みが薄れる
特に運動開始時に痛みがあり、体が温まるとともに痛みは薄れます。しかし、速い動きや強い力を出す動作では痛みが出ます。腱周囲炎では、すれるような、引っかかるような異和感もあります。多くの場合、患部に腫れが見られます


靭帯損傷
足関節の捻挫は、あらゆるスポーツ場面でよく起こります。それゆえ軽いケガと考えられがちで、処置が悪かったために、後遺症を残すことも少なくありません。捻挫で実際に損傷を受ける組織には、靭帯や関節包、ときに骨や軟骨も含まれます。関節が動く限界(制動限界)を超えて起こるため、多くの場合は靭帯が損傷されます。その意味では「捻挫」を「靭帯損傷」といいかえても誤りではありません。

靭帯の周囲に疼痛
ときには腫れや血腫も
急性の症状としては、靭帯の周囲の疼痛があります。足関節の腫れや血腫を伴うこともあり、その場合は関節内の損傷を考えなければなりません。
強い内返しでは、内側の痛みや腫れを生じることもあります。また、後突起の損傷が起これば、後方(アキレス腱の奥のほう)の痛みも出ます。

処置が不十分だと、損傷された靭帯が緩み、制動機能が低下して捻挫が慢性化します。いわゆる「捻挫グセ」です。着地などの際に、足首の内返し方向と前後方向に不安定感が発生します。


後実起障害
足関節を構成する足側の骨である距骨には後方に突起が出ています。この突起(後突起)は足関節を底屈すると脛骨の下端の後方部分と衝突することがあります。突起の大きさには個人差があり、大きな突起は衝突を起こしやすいと考えられます。
そのため、捻挫をきっかけに後突起の痛みが発生する場合や、スポーツの動作で強い底屈を強制されて後突起に痛みが生じる場合があります。
後突起が距骨と分離して存在し、痛みを生じる場合に三角骨障害と呼ぶことがあります。生まれつき分離しているケース、捻挫に伴う骨折で分離したケース、2つの可能性が考えられます。

底屈時の痛み
挟まる感じ
主な症状は、足関節底屈時の後方の痛みや衝突感です。特に、ランニングやジャンプで地面を強く蹴ろうと底屈しようとするときに痛みで蹴ることができない、あるいは何かが挟まる(ぶつかる)感各が生じる、などの訴えが見られます


脱臼骨折
足関節捻挫と同様のメカニズムで内返し(内反)や外反の負荷が加わったとき、その負荷の強さによっては、靭帯損傷にとどまらず、骨折や関節の脱臼が生じることがあります。

足関節部に著しい変形と強い痛み
受傷時には、「ボキッ」という骨折音がすることがしばしばあります。非常に強い痛みがあり、多くは痛みのために体重をかけることができなくなります。足関節部の変形が著しい場合は、脱臼骨折を疑ったほうがよいでしょう。この場合、すぐに病院でレントゲン検査を
行うことをすすめます。

フットボーラーズアンクル
サッカーやラグビー、アメリカンフットボールなど、フットボールと分類されるスポーツでは、急なストップや方向転換、接触プレーなどが原因で、足関節にさまざまな方向への負荷が加わります。こうした負荷の繰り返しの結果、足関節には特有の変化が起こります。これをフットボーラーズアンクルと表現します。

足関節の可動域の制限、特に動作時につまる感じやぶつかる感じを持つようです。
また、運動後足関節全体の腫れ(水腫や血腫)が見られることもあります。



中足骨疲労骨折
足の甲の痛みは多くのスポーツで見られます。その中で比較的多いのは中足骨の疲労骨折です。中足骨は中手骨同様に各足趾の根もとに1本ずつ存在しています。多くの中足骨疲労骨折は第2から第4の3本に起こりますが、まれに第1中足骨にも起こります。ジョーンス骨折と呼ばれる第5中足骨の基部の疲労骨折については、発生機転や治りにくさから、別に扱います。

第2~第4中足骨に発生する疲労骨折は、多くは骨幹部(長骨の中央部分)に発生しますが、まれに中足足根関節に近い基部(長骨の端の部分を指す。ここでは中足骨の足首寄りの部分)にも発生し、これは比較的治るのが難しいとされています。
その理由は、患部が隣接する中足骨を結ぶ靭帯で固定されている部分との境界部となっているためと考えられます。つまり靭帯がなくなった箇所で急に動きが大きくなるからです。

足の甲が痛む
足の甲の痛み、特に運動時(荷重時)痛が主な症状です。日常生活の歩行や階段昇降程度では痛みがないことが多く、逆に日常生活動作でも痛みがある場合には骨の損傷が大きいと考えなければなりません。


舟状骨疲労骨折
舟状骨は足の縦アーチの中心に位置する骨で、足に体重がかかるとき前後の骨から圧力を受けます。このため、舟状骨の疲労骨折はいろいろな陸上でのスポーツ場面で発生します。しかし、スポーツによっては体重のかけ方を変えることで痛みが軽くなるため、我慢してトレーニングを続けてしまい、発生から長期間経って医療機関を受診するケースも見られます。

足の内側に体重をかけると痛みがあり、母趾球に体重をかけて蹴り出すことができなくなります。そのため、多くの選手は足の外側で体重を受けることで痛みを減らしトレーニングを維絲売しようとします。その結果、 トレーニング中に強い痛みとともに完全な骨折となる場合もあります。


ジョーンズ骨折
ジョーンズ骨折と呼ばれている第5中足骨の基部の疲労骨折は、難治性(治療が困難であること)であり、偽関節型となって完全骨折にもなりやすい障害です。そのため、スポーツ選手やスポーツドクターを悩ませています。特にサッカーの選手たちに多く発生しています。
第5中足骨の基部には短勝骨筋腱が停止しています。そのため、外側の骨皮質に亀裂が生じると、短誹骨筋に引っ張られる形となり、癒合が妨げられやすくなるのです

足の外側での荷重や切り返しが困難に
第5中足骨基部に一致した運動時痛が生じます。
そのため、足の外側での荷重や切り返し動作が困難になります。


外脛骨障害
足の舟状骨の内側が突出し、その部分に痛みを持つ選手は、比較的多く見られます。これは外脛骨と呼ばれる足の過剰骨で、歯でいうところの八重歯のようなものです。以前にスポーツ選手の足のレントゲン画像を調べたところ、30%以上の選手に外脛骨が確認できました。つまり、3人に1人は外脛骨を持っていることになります。

釜骨は、その形態から3種類に分類されています。I型は舟状骨本体から離れて骨筋腱に付着する形で存在するもの、舟状骨本体と線維性に連結しているもの、完全に癒合して舟状骨が長く内側に突出しているものです。外脛骨には、本体の舟状骨と同様に後腫骨筋腱が付着するため、その力を受けます。

したがって、骨筋によって引っ張られる力が席みを出す要因になることが推測されますが、原因はどうもそれだけではないようです。成長期にしばしばこの骨の痛みが出現し、また、成人でも捻挫を起こしたあと、この骨の痛みが出現することがあります

荷重時の外脛骨部の痛み
発生機転の第1と第3が原因の場合は、骨部の痛みが運動時、特に荷重時に発生します。第2の場合は堅いシューズを履いたときのみ発生します。


リスフラン関節損傷
リスフラン関節は、足の甲の中央付近の関節で、中足骨と足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨、第1~ 3楔状骨の総称)との間の関節です。この関節はもともとあまり大きな動きのない関節で、しかも中足骨の長さが母趾とほかの中足骨とでは異なるため、動きに違いが生じます。リスフラン関節の損傷は、球技において足の捻挫で発生しますが、評価。診断が難しく、軽視されがちです

荷重時に足背部の痛み
足背部の痛み、特に荷重時の痛みが主症状です。この部分が痛む場合は、周辺の損傷を合併している場合が多く、その治療のために、荷重をしていない間は、症状に気づかないこともあります。

足底腱膜炎
スポーツ選手のかかとの痛みは、特に陸上競技の選手に多いものです。かかとの痛みにはいくつかの原因がありますが、かかとの皮下にあるクッション組織(脂肪褥)が圧迫されて生じる痛み、かかとの骨の突起(内側隆起)の下にある滑液包に炎症が起きて生じる痛み、足の縦アーチを支える足底腱膜の炎症による痛みなどがあります。

ここでは、頻度が高く、痛みの管理や再発予防に注意を要する足底腱膜炎について詳しく説明します。
足底腱膜は足の縦アーチを支える機構の1つで、踵骨から各足趾の底面まで広がっています。

足底に体重がかかると痛む
体重が足底全体に加わるときに疼痛を感じます。特に運動開始直後、さらには起床して体重をかけ始めるときに痛むのが特徴です。患部の腫れや盛り上がりを自覚することもあります。速い動きの際には切れるのではないかと思うほどの強い痛みを感じることもあります。

外反母趾
外反母趾はもともと女性に多い足の変形で、母趾が基部の関節で外側に曲がってしまい痛みを伴う疾患です。統計的には年齢とともに増えますが、中学生頃から発生します。
最近では、スポーツを行う女性にも外反母趾の痛みに悩む人が増加しているようでシューズメーカーも、外反母趾を悪化させないシューズを考案しているようです。

飛び出ている部分に痛み
大部分はシューズを履いて動くときに痛みを覚えます。特に、外反が生じている中足趾節関節の突出部の内側が赤く腫れ上がっていることが多く見られます。外見上では、当然ながら母趾の外反変形が目立ちます。

ときに、外反変形部で皮下を通る神経が圧迫され、母趾のしびれや知覚の低下を生じることもあります。
母趾に体重をかけにくくなり、母趾球よりも第2~ 3中足骨頭で地面をとらえるようになるため、その直下の皮膚が固くなりタコになることもしばしばです。

アキレス腱付着部炎
アキレス腱の付着部も、アキレス腱の痛みの生じる部位として珍しくありません。
アキレス腱は、付着部のすぐ上で踵骨との衝突や摩擦を減らすクッション組織(踵骨後滑液包)で保護されています。しかし、滑液包の保護を超える力が加わり続けると、滑液包自体が腫れ、痛みを発生します痛みと腫れが生じる運動時のかかとの痛み、特にアキレス腱付着部周辺の痛みと腫れです。炎症が強くなると、日常生活の歩行、階段昇降でも痛みが出ます。


内科的障害
貧血
貧血は、血液中で酸素の運搬を担う赤血球や、実際に酸素と結合するタンパク質であるヘモグロビンの不足した状態です。

赤血球やヘモグロビンの不足により、酸素の需要に対応できなくなり、息切れや頻脈が起こり、持久的なパフォーマンスが低下します。極度の貧血ではめまいや失神を起こすこともありますが、一般に脳貧血と呼ばれるのはイコ劃王の症状で、必ずしも真の貧血ではありません。また、顔の色や唇、まぶたの裏の色などに赤みが少なくなるのも、ある程度進んだ貧血の所見です。


オーバートレーニング症候群
スポーツ選手は、日常生活に加えて激しいトレーニングをしています。特に日本の選手はトレーニングを休むことに不安や罪悪感を持つ傾向があり、上手に体を休ませることができません。その結果陥る体調不良が、オーバートレーニング症候群です。

たとえてみれば、動きすぎの会社人間が、過労で倒れるようなものです。ある日のトレーニング量が非常に多くて、疲れ切ったという急性の変化としての疲労は、過労あるいはオーバーワークという表現が使われます。これに対して、オーバートレーニング症候群は、毎日のトレーニングによる疲労が徐々にたまり、気づいたら体が常に重く、 トレーニングしているのに動けなくなってくる、成果が落ちてくる、という状態です。

起床時の疲労感に注意
疲労症状は、この病気に必ず見られる主症状です。特に朝の起床時にすっきりしない、休んだ感じがしない、という朝の疲労の残りが重要です。また、多くの選手でパフォーマンスの低下が見られます。

ある程度長期化した場合には、疲労感以外にもさまざまな症状が出てきます。めまいのほか、風邪が治らない、腹痛や下痢、不眠、筋肉痛、いらだちやうつ状態など、驚くほど多様な症状が現れます。そのため、オーバートレーニングとは別の病気と考えて、いろいろな診療科を渡り歩く場合もあります


熱中症
高温の環境下で運動を行うことにより、体温調節機構が働かなくなる熱中症は、重症化すると意識障害や筋肉の破壊、腎不全などを起こして死に至る重大な障害です。
温暖化が著しい現在の環境では、常に熱中症の危険を意識し、対策をとりながらスポーツ活動を行う必要があります。

症状は4段階。死に至ることも
熱中症には次の4段階の症状があります。
熱失神:体温上昇に対して皮膚表面の血管を拡張させるため血圧が下がり、脳ヘの血流が減ることで、めまいや失神がおきる。

熱疲労:脱力、倦怠、めまい、頭痛、吐き気などの症状が現れる熱けいれん:電解質異常により手足や全身の筋肉にけいれんが起こる。
熱射病:体温上昇(40度以上)で体温調節中枢が障害され、意識障害(もうろうとする、言動や応答がおかしいなど)、頭痛、吐き気など中枢神経障害の症状が起こる。
進行すると、ショック状態となり、血液凝固異常や多臓器障害から死に至ります。


運動誘発性ぜんそく
気管支ぜんそく(以下、ぜんそく)は現代の子どもたちに増加している疾患の1つです。家屋の気密性が増したことや、車の増加といった環境変化が原因といわれていますが、必ずしも増加の原因は明らかではありません。

ぜんそくは気管支の平滑筋がなんらかの原因で縮まって気管支が狭まり、空気抵抗が高くなった状態です。こうした状態が急激に起こるため、ぜんそく発作と呼ばれます。
ぜんそくを引き起こす直接の原因は、ハウスダスト、動物の皮膚や毛などアレルギー源(アレルゲン)の吸入や食物が多いのですが、気管支が過敏な子どもでは、冷たい空気を吸うだけでもぜんそくを起こすことがあります。

ぜん鳴やせきで呼吸困難に
ぜん鳴(ぜいぜいいう音)や咳が見られ、呼吸困難を訴えます。特に息を吐くことができにくくなります。また、気管支分泌物が痰となって排出されます。


過換気症候群
私たちの呼吸は、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度によって、速くなったり遅くなったりする調節機構が働いています。酸素濃度が減って二酸化炭素濃度が増えると、呼吸が増えて速くなり、酸素濃度が高くなって二酸化炭素濃度が低くなると、呼吸は減るようになっているのです。

なんらかの原因で呼吸数が増えすぎると、二酸化炭素濃度が低くなり、呼吸が抑制されてしまいます。この状態が過換気症候群の本体です。

呼吸抑制による息苦しさのため、深く大きい呼吸をしようとして、苦悶の顔ぼうになります。
手足のしびれや知覚異常、ふるえ、テタニー症状(手足の筋肉がけいれん、腕や脚の関節が曲がったままの状態になる)など、低二酸化炭素症状も見られます。このような症状の結果、ますます不安に陥り、呼吸を増やそうとする悪循環に陥ります。


運動性無月経
トレーニングがハードになると、月経周期が乱れるといケ女性スポーツ選手の話をしばしば耳にします。特に、持久系のスポーツ競技では、レベルが高くなればなるほど、このような問題が多く見られます。また、月経周期は、年齢が若いほど安定せず、安定するまでには初経から3~ 5年かかるといわれています。こうした年代に、ハードなトレーニングを行うと、月経周期の乱れが出たり、月経そのものが止まってしまったりする例(無月経)も出てくるのです。

無月経の原因はさまざまで、視床下部性、下垂体性、卵巣性などの種類、があります。ここで解説する運動(誘発)性無月経は、本来ほぼ正常な月経周期であった選手が、運動負荷によって無月経になったものを指し、そもそも初経がない(原発性無月経)とは異なります。男性のスポーツ指導者が多い現状では、無月経を指導者に相談しにくいというケースが多く、また、男性指導者も、相談をされても対応できず困ってしまうことが多いようです。
以前は、「無月経になるのが一流選手の証だ」という暴論を吐く指導者までいたようで、背景にある問題点がなかなか理解されませんでした。


3カ月以上ない場合は無月経
文字通り月経がしばらくないという状態です。定義では、3カ月以上月経がない場合に無月経とします。無月経を訴える選手の中には、年に3~ 4回という人から数年間まったくないという人まで、程度はさまざまです。また、基礎体温の変動が小さく高温期と低温期がはっきりしません。


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