自分が成長するために周囲の人を味方につけるという考え方
周囲の人やモノすべてを自分の味方につける
人間一人だけでできることなどたかが知れている。ビジネスにおいても人生においても、一人だけで精一杯努力しても、一は一にしかならない。この一の力を二倍、三倍に、そしてより一層大きな成果を得るには、どうしても他人の力を借りる必要が生じてくる。他人の力と知恵を活用すれば、10にも20にも発展していく可能性があるからだ。
一つの目標に向かっていくときに、各個人が持ち合わせている得意な能力や知恵を活用すれば、一人で奮闘するより目標達成に至るまでの時間も短縮され、パワーも倍加するはずだ。
こうした方法論をとるときに大切なのは、それぞれの立場や能力を十分に認め合うことである。各自が自分の方法論にこだわり、自己主張していたのでは事は成し遂げられない。いったん相手に委ねた部分は一切口出しせず、徹底的に任せてしまうぐらいの度量が必要になる。完全に任せ切れないのなら、最初から他人の力を借りようなどとは思わないことだ。
人は自分では考えもつかないアイデアやノウハウを持ち合わせている。その意見に対して素直に耳を傾ける姿勢があれば、他人から吸収できるものはたくさんある。そして、つかんだノウハウをいかにして自分の仕事に活かすかで目標達成のスピードが大きく違ってくる。
自分が成長し、向上するためには周囲にいる人をすべて協力者に変えて後押ししてもらうことだ。日ごろから「忙しい、仕しい」と口癖のようにいって慌ただしく動き回っている人に限って、たいして仕事の成果があがっていないことが多い。こうした人は、何が何でもすべてを自分でやらなければ気のすまないタイプであったりする。
自分ですべてをやるか、人の協力を仰いで事にあたるかは、それぞれの人の性格によっても異なるだろうが、後者のほうが合理的・効率的にものごとを遂行できるのは間違いない。人の協力を得ることができれば、自分が活動する時間も増え、より幅広い活動ができる。
その結果、一つのことを自分で一生懸命やっている人の二倍、三倍の分量の仕事をこなすことも可能になる。すると、他人は「仕事ができる人間」という評価をしてくれる。高い評価を得てしまえば、自然にグレードの高い仕事が任せられるようになり、自分のスキルもアップしていく。
ただし、他人の力を利用するわけだから、その人たちとの常日ごろのつきあいが大切になる。
誠意を尽してつきあうのは当然のことであり、細かい面倒を見る必要もあるだろう。こうした濃厚なつきあいの中から、自分の手足となって協力してくれる人間が育ち、いざというときに労を惜しまずに協力してくれるようになるのだ。
周囲の人を味方につけるトレーニング
スポーツの世界も以前にくらべて、情報化社会になりつつある。昔のように馬車馬のごとく身体をいじめ抜いて汗を流す、勝利は血と汗の結晶というのではなく、いかに相手チームに関する情報を正確・迅速に集められるか、最新のスポーツ科学による各種のトレーニング法を自分のものにできるかといった頭脳戦・心理戦の要素が大きくなっている。
しかし、昔気質のスポーツ指導者は、そうした流れについていけず、自分の経験論の範囲内だけで指導してしまう。つまり、自分の成功体験だけで若い選手を判断してしまい、あげくにはそっぽを向かれてしまうことになる。
仮にこうした情報に興昧を持った指導者であっても、一人でそれらをすべて学んだり指導することは不可能に近い。
では、いったいどうすればいいのか。
答えはビジネス社会の中にある。
たとえば、指導者を会社の社長とすれば、自分(指導者)の下に会社組織のように各専門家を配置すれば、問題は解決できる。自分がカバーできないところは、それを専門にする人間を呼び集めて、指導してもらえばいいのだ。こんな簡単なことが、いまだにスポーツの世界では実現していない。
その原因の一つとして、指導者の中に「この選手を育てたのは自分だ」とアピールしたい気持ちが強いことが考えられる。そうなると、強い独占欲が湧き、すべてを自分で抱えてしまうということになる。
成功しているときにはそれでもいいかもしれないが、選手にとっては何でも指導者のおかげだといわれでも気持ちいいはずはない。しかも何かでつまずいたときに逃げ場もないので、「俺についてこい」的な、それこそ体育会系のノリになってしまいかねない。ここにいたっては、客観的な視点がすっぽり抜け落ちてしまう。
こうしたときに、他の指導者の助言が一言でもあると、救われることがある。こうしたアドバイスを適切なときにもらえるように、周囲に自分の理解者を増やしておく努力は必要であろう。