筋トレで効率よく筋肉をつけるトレーニングに6つある原則とは
「負荷をかける」ことの最も原始的な形態は、重力に抗して自分のからだを支え、立ち上がることです。
地球上で生きている限り、必ず生じる「体重」というからだの重さは、それ自体、無意識のうちにかけられている負荷にほかなりません。さらに「歩く」「走る」「跳ぶ」などの動作が加わることによって千変万化する負荷となります。その意味では、人間は生まれてから今日まで、無意識のうちにトレーニングを積んできていることになります。
しかし、人間が重力に抗して立ち上がり、歩き始めることは、人間が進化の過程で身につけたごく自然な行為です。私たちはそれを「成長」と理解しており、トレーニングとはいいません。
トレーニングとは、人為的・作為的に負荷をかけ、意識的にそのレベルを上げていくことをいいます。
自分のからだを支え、立ち上がり、歩くことが自然な成長なら、目的と意志をもって、もっと速く歩く、走る、速く走る、長時間走る、長距離を走る。また、自体重を四肢の全部または一部にあずけ、それを自力で克服することによって、自体重は負荷となります。
自体重を負荷とする運動形態としては、
①自体重を押し上げる
②自体重を吊り上げる
③重心を移動させることによってからだを支える
④からだの全部または一部を起こす
などの方法があります。
自体重を押し上げるトレーニングとしては、からだを伏せて腕で押し上げる腕立て伏せ、自然体立位から膝と腰を折ってからだを沈めて支え、さらにそこから立ち上がるスクワットなどがあります。
自体重を吊り上げるトレーニングとしては、固定されたバーに腕でぶら下がり、腕の力でからだを引き上げ、また元に戻る懸垂(チンニング)などがあります。
重心を移動させることによってからだを支えるトレーニングとしては、自然体立位から脚を左右に踏み出してからだを支え、また元に戻るランジ動作があります。
からだの全部または一部を起こすトレーニングとしては、床に仰向けになり、臀部を床につけたまま上体と下肢を同時に起こしたり、上体だけを起こす腹筋運動などがあります。
いずれの運動も動作の角度、深さ、速度あるいは姿勢などを変えることによって運動の強度を調節することができます。
これらのトレーニングを総称して「自体重トレーニング」と呼んでいます。
筋トレの原理
①過負荷の原理
トレーニングによって身体に新しい適応をもたらすためには、一定水準以上の負荷をからだに与えることが必要です。これを「過負荷の原理」といいます。この原理は筋肉トレーニングにも当てはまります。たとえば、スポーツ選手が競技力向上のために筋力を強化しようとする場合、試合中にからだに加わる負荷よりも大きな負荷を利用してトレーニングを行います。一般の人でも、体力低下を防止するときには、日常生活中にからだに加わる力よりも大きな負荷でトレーニングすることが必要です。
これまでの研究から、筋肉トレーニングの目的に合ったトレーニング強度が明らかにされています。
②特異性の原理
筋肉トレーニングの効果は、トレーニングの内容や与え方を反映した変化が筋肉の形態や機能に現われます。これを「特異性の原理」と呼びます。
たとえば、腕の筋肉をトレーニングした効果が脚の筋肉に現われることはありません。逆に脚の筋肉をトレーニングしても、その効果が腕の筋肉にもたらされることもありません。
筋肉トレーニングを行う場合には強化したい筋肉を明らかにして、その筋肉を用いる運動を選ぶことが大切です。
筋肉トレーニングとして行われる動作と、その運動によって強化される筋肉について紹介されています。
③可逆性の原理
筋肉トレーニングを継続すると、筋肉は強く、太くなります。しかし、このようなトレーニングによって獲得された効果は永続的なものではありません。トレーニングを中止して、筋肉へ与える負荷がなくなると、せっかく獲得された効果もやがて消失してしまいます。これを「可逆性の原理」といいます。
トレーニング中止後の効果の消失の程度は、効果を落得するまでのトレーニング内容や期間などに影響されます。しかし、骨格筋については、トレーニングによって獲得された筋力や筋量がトレーニング中止後に元のレベルまで減少することは、実験的にも臨床的にも明らかにされています。
筋トレの原則
トレーニングの原理である「過負荷の原理」「特異性の原理」「可逆性の原理」は、トレーニングを行う人の体力や年齢、性あるいはトレーニングの難度などにかかわらず当てはまるものです。
しかし、実際のトレーニングにおいてはトレーニングを行う人の体力、年齢、性別、トレーニングの経験や習熟度、スポーツ選手ならその技術水準などを常に考慮しながら行うことが重要です。
このとき考慮しなければならないものとして、次の六つのトレーニングの原則があります。
①意識性の原則
筋肉トレーニングを行うときには、トレーニングの目的、内容、効果、方法などをよく理解して、積極的に行うことが大切です。トレーニングについての意識が薄い状態でトレーニングを行うと、効果が少なくなるだけではなく、ときにはケガの原因ともなります。また、トレーニング中は、トレーニングしている部位に意識を集中することが大切です。
②全面性の原則
筋肉トレーニングを行っている人の中には、腕や胸など一部の筋肉だけを強化している人がいます。しかし、筋肉トレーニングで重要なことは全身の構造と機能をバランスよく高めていくということです。頸、接腕、脚および手足など全身の筋肉にくまなく負荷を加えてトレーニングすることが必要です。
③専門性の原則
スポーツ選手のトレーニングにおいては、競技で利用される筋肉を、競技と同じ動作で鍛えるようにしなければなりません。競泳の選手がキック力を増すために陸上でスクワットばかり行っていたのでは、競技力向上に連結する脚力を強化することは期待できません。実際に泳ぎながら脚筋に過負荷が加わるような筋肉トレーニングを行う必要があります。これを「専門性の原則」といいます。
④個別性の原則
スポーツ選手でも一般の人でも、筋肉トレーニングを行う場合には個人の能力に合った方法を行うようにしなければなりません。自分の能力を考えずに、他人の方法を取り入れることはすすめられません。社会的にはマイペースは身勝手とみなされることがありますが、トレーニングでは自分のペースで自分に合った方法で行うことが重要です。
⑤漸進性の原則
筋肉トレーニングの効果は、トレーニングの強さや量が適度なときに現われます。トレーニングが強すぎたり量が多すぎると、効果が現われないどころか、障害の原因ともなります。
⑥反復性の原則
筋肉トレーニングの効果を獲得するためには、トレーニングをある程度の期間にわたって規則的に繰り返し行うことが必要です。実際にトレーニングを行うときは、反復の原則に従って1日当りの実施回数が決められます。
運動の実施回数はトレーニングの目的によって異なります。
筋トレの様式
筋肉が張力を発揮するときの筋活動様式は、
等尺性筋活動(アイソメトリック・コントラクション)
短縮性筋活動(コンセントリック・コントラクション)
伸張性筋活動(エキセントリック・コントラクション)
の三つに分けられます。
等尺性筋活動とは、筋肉は長さを変えないで、関節の屈曲伸展もなしに力を発揮する状態を指します。
短縮性収縮とは、筋肉は縮みながら力を発揮する状態を指します。
伸張性収縮では、短縮性収縮と反対に筋肉は伸びながら力を発揮する状態を指します。
このような筋活動様式によって行われる筋肉トレーニングを、それぞれアイソメトリックトレーニング、コンセントリックトレーニング、エキセントリックトレーニングといいます。
このうちコンセントリックとェキセントリックについては、ダンベルやバーベルを用いるときのように負荷が一定であればアイソトニック(等張力性)、筋肉の収縮速度が一定であればアイソキネティック(等速性)と呼ばれます。
筋肉トレーニングを行うときには、これらのトレーニングの特徴を理解して、目的にあった様式を選ぶことが大切です。
それぞれのトレーニング方法の特徴は次のようにまとめられます。
①アイソメトリックトレーニング
筋肉が長さを変えないで力を発揮する活動様式を利用したトレーニング法です。比較的弱い筋肉を強化したり、筋骨格の障害予防のために利用できます。ただし、このトレーニングでは筋肉が短縮したり伸張することはありません。
そのために、スポーツの技術やパフォーマンスを向上させるといった神経系の改善にはあまり効果がないと考えられています。
②アイソトニックトレーニング
筋肉に一定の重さを加えながら行うトレーニングです。この例としてダンベルやバーベルなどを使ったトレーニング法があります。運動種目に合った動作で行うことができることから、神経系の向上に役立つと考えられています。
③アイソキネティックトレーニング
関節が動く全範囲にわたって筋肉が最大力を発揮できるトレーニング法です。このトレーニング法では特殊な装置(トレーニングマシン)を利用し、運動の全範囲にわたって運動速度が一定になるようにします。ケガからのリハビリテーションや筋パワー向上のために効果的な方法です。
筋肉トレーニングの代表的な方法であるアイソメトリック、アイソトニック、アイソキネティックの特徴をまとめると筋力の発達、運動障害の防止、スポーツスキルの向上にはアイソキネティックトレーニングが最も効果的だといえます。アイソトニツクトレーニックは安価、運動のしやすさに優れています。