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関節のスポーツ障害である脱臼や捻挫・靭帯損傷の症状を詳しく解説

関節の構造
骨と骨が向かい合って接する部分は、大部分が関節と呼ばれ、一定の動きが許容される構造になっています。動きがない骨同士の向かい合いには、結合(例:恥骨)と縫合(例:頭蓋骨)があります。

関節には、一定範囲の動きを支持するための構造があります。関節を包む関節包と、特定の方向の支持をする靭帯がそれです。

関節周囲にある側副靭帯は、関節包の一部が厚く強くなった構造と考えることもできます。靭帯は、関節の周囲に存在するだけではありません。たとえば膝関節では、関節の内部にも靭帯が存在して、関節を制動する働きをしています。こうした構造の支持や制動の中で、向かい合う骨が互いに位置関係を変えることにより、関節の運動が実現しているのです。


関節の種類
関節の形にはいろいろな種類があります。
最も基本的な形は蝶番関節で、このタイプの関節は、曲げる、伸ばすという1つの平面上の動きだけが許容されています。臼関節(または球関節)は、3次元的な空間上で関節運動を行うことができます。

肩関節や股関節がこのタイプです。
これらの中間で、2つの平面上の動きが許容される関節もあります。関節は、構成する骨の形態から、おおよその動きを予測することができます。つまり、形態は機能を反映しているのです。


関節を動かす仕組み
私たちは体を動かすのに、関節の曲げ伸ばしを利用しています。関節を曲げたり伸ばしたりできるのは、ある骨に付着している筋肉が、関節を越えたところにある別の骨に付着しているためです。このような構造になっている筋肉が、収縮したり弛緩したりすることで、関節を動かしているのです。


関節の障害(脱臼、亜脱臼、捻挫、靭帯損傷)
スポーツでは、関節部分に大きな力が加わることがしばしばあります。その結果、関節が壊れる障害が発生します。

脱臼と亜脱臼
関節を構成している向かい合う骨同士の位置関係が完全に壊れたものを「脱臼」といいます。少しでも位置関係が残っている場合が「亜脱臼」です。

脱臼や亜脱臼が起きるときには、関節を制動している靭帯や関節包も損傷を受けています。場合によっては、靭帯とともに付着部の骨の一部が剥がれることもあり、これは裂離骨折と呼ばれます。どの程度の損傷を伴うかは、関節に加わった外力の大きさや、関節の形によって異なっています。

ある関節において脱臼が頻繁に起こるようになった場合、「脱臼グセがついた」という表現をよくします。しかし、これは決してクセがつくようなものではありません。関節を制動している靭帯や関節包が、十分な機能を果たさなくなっているために起きる現象です。
このような状態で起こる脱臼を「反復性脱臼」といいます。

脱臼や亜脱臼の治療は、関節の位置関係を元に戻す整復で終了するのではありません。そこから治療が始まるのです。整復後は、損傷を受けている靭帯をきちんと適切な位置で癒合させるため、圧迫や固定を行うことが大切です。

それには、サポーター、ブレース、テーピングなどによる圧迫と固定が効果的です。靭帯が骨から剥がれるように損傷を受けた場合、もし元の付着部に癒合しないと、靭帯にゆるみが出て、不安定な関節になってしまいます。このような後遺症を残さないためには、治療の初期に適切な圧迫を加え、癒合を助けることが大切です。損傷を受けてから数週間以上が経過し、その時点で圧迫し直しても、不安定性を改善することはできません。

捻挫、靭帯損傷
捻挫という病名は、関節をひねったということを表わしているだけです。ただ、関節をひねったときには、多くの場合、骨の位置関係を制動している靭帯が損傷を受けています。したがって、「捻挫=靭帯損傷」と考えても大きな間違いはありません。

靭帯は腱と同じように、コラーゲン線維の束から成る組織です。靭帯と骨との接合部は、靭帯の線維が骨に突き刺さるようになっていて、固くくっついています。腱と骨の接合部と同じ構造です。

靭帯損傷は、このような骨との付着部で起こるものと、靭帯の実質部(線維の部分)で起こるものとがあります。靭帯損傷の治療は、圧迫して固定することが1つの方法です。その他、靭帯を骨に縫いつける方法もあります。

靭帯才副易を繰り返して靭帯組織が減ってしまい、縫い合わせたり、縫いつけたりすることができない場合には、靭帯の再建という方法をとります。人工の靭帯を用いたり、本人の腱を用いたりして、これらを本来の靭帯の位置に縫いつけます。

再建に用いる人工靭帯は、メッシュ状になった人工の線維で、本人の靭帯組織が再生するのを誘導する形状になっています。また、靭帯の代わりにする腱は、採取してもあまり問題が生じない腱が使われます。

手首の手のひら側にある長掌筋の腱、下肢の半腱様筋の腱などが使われます。膝の前十字靭帯損傷の再建手術では、半腱様筋の腱や膝蓋腱が用いられますが、最近では、膝蓋腱を用いることが多くなっています。足関節の靭帯の再建手術には、足底筋や誹骨筋の腱が使われています。


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