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骨折や骨の種類などスポーツをする人なら知っておきたい情報

骨の種類
私たちの体には、いろいろな形をしたたくさんの骨があります。全身の骨は、長い骨、短い骨、平べったい骨、丸い骨というように、形の異なるグループに分けることができます。

長い骨は長骨(または長管骨)と分類され、腕や脚の大きな骨は、大部分がここに入ります。
平べったい骨は扁平骨と分類されます。

骨盤、肩甲骨、頭蓋骨などがこれに相当します。
手首や足首付近には、小さな骨がたくさんあります。これらの骨は、長骨でも扁平骨でもなく、短骨と分類されます。

全身のすべての骨が、この3つの種類に分類できるわけではありません。骨によっては、一部は短骨で、一部は扁平骨というように、2つの性質を合わせ持っている場合もあります。

骨の構造
骨の内音隣青造は、長骨、短骨、扁平骨で異なっています。
長骨の場合、両端の内部には、海綿骨という網目状の骨がぎっしりと詰まっています。中央部は管状になっていて、表面の殻に当たる皮質骨が厚く、内部には隙間があります。

骨髄腔と呼ばれるこの隙間には、血液細胞を作り出す骨髄が入っています。短骨では、長骨のような部分による違いはなく、全体として海綿骨がぎっしりと詰まった状態になっています。

扁平骨は、2つの硬く厚い皮質骨が向かい合い、その間に海綿骨の層が入っています。
この3つの分類に加え、顔面の鼻の近くには、中に空気の入った空洞を持つ含気骨という形態の骨があります。


運動器の障害の基本像
スポーツ中に発生するケガは、大きく2つに分けられます。1つは、骨折のように1回の大きな力の作用で起こるケガ。もう1つは、疲労骨折のように繰り返し力が加わり続けた結果として起こるケガです。

日本では、前者を「急性経過のケガ」あるいは「スポーツ外傷」、後者を「慢性経過のケガ」あるいは「スポーツ障害」と呼んでいます。骨以外の組織に起こるケガも、この2種類に分けることができます。

急性経過のケガと慢性経過のケガを合わせて「スポーツ傷害」と表現する場合もありますが、犯罪の傷害と同じになってしまい、必ずしも好ましくありません。そこで、両者を含めて「障害」と表現することにします。

この項では、スポーツで起こる代表的な運動器のケガについて、実際にどのような変化が生じているのかを解説します。何が起きているのかを知ることで、治療や予防に関しての理解を深められるでしょう。


骨の障害(骨折、疲労骨折)
骨折の定義
骨は硬い構造をしていますが、ある程度の弾力性があり、わずかに曲がったりたわんだりします。ただ、その強度を超える大きな力が加わると壊れます。この状態が「骨折」です。肉眼的にわかる大きさの亀裂が生じるものと、肉眼的にはわからないものの顕微鏡で見るとわかるレベルの亀裂が生じているものがあります。

スポーツ中に急性に発生する典型的な骨折の多くは、肉眼的にわかる亀裂が生じる骨折です。皮質骨が割れ、海綿骨も途絶し、骨の周囲を包む骨膜の断裂も生じます。骨折で分かれた部分にずれ(転位)が起こると、骨の内部の骨髄も損傷を受け、流れ出してしまいます。骨折は骨という臓器の損傷と考えることが必要です。


骨折の分類
骨に生じた亀裂(骨折線)の入り方によって、横骨折、斜骨折、らせん骨折、粉砕骨折に分類されます。
また、完全骨折と不全骨折に分類する方法もあります。骨折線によって、骨が2つ以上の部分に完全に分けられる場合が完全骨折で、骨が完全に分かれていない場合が不全骨折です。

骨折の起こり方による分類もあります。
圧迫する力が働き、押しつぶされるように生じた骨折が圧迫骨折です。主に脊椎などに起こります。また、靭帯、腱、関節包などに引っ張られることで、裂けるように生じた骨折を裂離骨折と呼びます。

また、皮膚損傷を伴うか否かで単純骨折、複雑骨折と分類しますが、一般に、完全骨折や粉砕骨折と誤解されて使われがちです。このため、閉鎖骨折(骨折が体内で起きている=単純骨折)、開放骨折(折れた骨が皮膚の傷から外に出ている=複雑骨折)の用語を用いるほうが:適切です。


骨折の症状
骨折の症状には、患部の痛み、腫れ、異常可動性(ぐらつき)があります。痛みや腫れは大部分の骨折で見られますが、異常可動性があるかどうかは、骨折の程度や部位によって異なります。

骨は血管に富む臓器で、骨折が起きると、骨の内部を通る無数の血管が損傷を受けます。それによって多量の出血が起こります。大腿骨のような大きな骨の場合、数百mlの出血が起こります。これがいわゆる内出血で、そのために骨折の起きた周囲には強い腫れが生じます。


骨折の治療
臓器としての骨を元通りに治すには、まず形を元の形に近い状態に整える必要があります。この操作を整復と呼びます。骨は修復能力が高く、折れた骨同士を近接させた状態で維持すれば、多くは自然にくっつきます。これを癒合といいます。まず、骨の前段階として仮骨という軟らかい組織ができ、その内部にカルシウムが沈着することで、硬い骨になっていくのです。

骨の周囲の骨膜に沿って作られる仮骨と、骨折した断面をつなぐように作られる仮骨が連結し、ひと続きの骨にしていきます。仮骨がレントゲン撮影で写るようになるのは、受傷して3週間ほど経った頃です。仮骨がしっかりした骨に成熟し、骨癒合といえる状態になるまでに2~3カ月かかります。

折れた骨同士が近接した状態に維持されず、動いてしまうと、その間に骨を作ることができません。その結果、骨と骨がつながらず、偽関節という状態になってしまいます。
偽関節になると、いつまでも痛みが残ります。また、関節を動かしたり、骨に付着する筋肉が収縮したりすると、違和感や骨のずれる感覚が生じます。そのため、運動できない状態になってしまいます。

偽関節になりやすいのは、骨膜や筋肉が大きな損傷を受けた骨折です。特に開放骨折では、骨に栄養を送る血管も大きなダメージを受けるため、偽関節になりやすいことが知られています。

骨折の治療では、折れた骨同士を近接した状態で固定することが大切です。安定した骨折では、ギプス固定など、体の外側で骨折部を支える方法を取ります。
折れた骨同士を近接した状態で維持できない場合は、手術を行って固定します。金属の固定具で骨折を動かないように治療する方法を内固定といいます。内固定には、鋼線固定、プレートスクリュー固定、髄内釘固定、螺子固定(スクリュー固定)などの方法があります


カルシウムや筋肉と骨頭骨、脊柱、手足などの骨は私たちのからだをささえ、まとめて「骨格」といわれます。骨格がなければ、私たちのからだはグニャリとそのまま横たわり、身動きできません。骨がとても硬いのは、カルシウム塩つまり、リン酸カルシウムと炭酸カルシウムが重さにして70%ほどもふくまれているためです。

それらは燃えないので、火葬のあとも骨は原形を保っています。もし骨を10%の硝酸にひと晩浸しておくと、ブヨブヨした骨が残ることでしょう。これは、カルシウム塩は溶けて、骨の重さの30%を占める「コラーゲン」というタンパク質繊維が残ったものです。

コラーゲンは、骨の主成な成分であるばかりでなく、からだ中のいたるところにあって、繊維や膜をつくり組織を保護しています。皮膚の下にもコラーゲン繊維が層をなして、しなやかさを保っています。靴やコートをつくるのに用いられる皮革は、コラーゲン繊維層の集合体なのです。骨格筋を包みこんでいる俗に″スジ″とよばれる白い膜も、コラーゲン繊維からできています。私たちのからだでもっとも多量にあるタンパク質はコラーゲンで、全タンパク質の約三分の一を占めています。人体には200個以上の骨があり、これらはそれぞれ決まった形と大きさをもっています。

けれども、共通したつくりがみられます。骨の表面はうすくて大きな「骨膜」でおおわれています。この骨膜はコラーゲン繊維からできています。骨膜には栄養分を補給する血管が多く通っており、内側にある造骨細胞が新しい骨をつくりだします。骨膜の下には、硬い「ちみつ骨」があります。ちみつ骨には、コラーゲン繊維とカルシウム塩の集まった硬いつくりの中に小さな孔が多数あり、その中に造骨細胞から変わった「骨細胞」が一つずつ入っています。

小さな血管が入りこんでおり、骨細胞に酸素や栄養分を送ってコラーゲンをつくらせます。ちみつ骨の中側にはすかすかな網目状の「海綿状骨」があり、すきまにはやわらかい「骨髄」があります。骨髄には、赤血球や白血球(リンパ球など)をつくる重要なはたらきがあります。放射線を多量に浴びると骨髄のはたらきが損なわれます。細長い骨の両端には軟骨があり、それが海綿状骨となって成長していきます。

カルシウムイオンと筋肉
骨格筋は運動神経の刺激によって収縮します。刺激がなければ、筋肉は弛緩状態にとどまっています。神経の刺激とは、電気的信号興奮(インパルス)です。この神経インパルスと筋収縮の関係は「興奮収縮連関」とよばれて、生理学上の大きな問題のひとつでした。

とても解決のできない問題と思われていましたが、この連関には意外にもカルシウムイオン(Ca2)が仲介となっていることがわかりました。神経インパルスは、筋繊維内のカルシウム貯蔵部からカルシウムを放出させることが明らかになったからです。微量のカルシウムイオンが、アクチンとミオシンの反応を起こすというわけです。カルシウムが除かれるとミオシンーアクチン反応は終わって弛緩します。

どこにでもある金属イオンの一つであるカルシウムイオンが筋収縮を支配しているとは、まったく予想外でした。この筋制御のしくみの解明がきっかけとなって、「細胞内信号」という新しい生体内情報系の研究がひろく展開されるようになりました。

カルシウムポンプ
筋小胞体膜上には、カルシウムポンプが多数存在しています。これは1949年にマイヤーホフが発見した「マグネシウム活性ATPアーゼ」で、江橋が筋弛緩因子を同定するさいに目安となりました。カナダのデイビッド・マクレナンはこのポンプを、分子量10万の酵素、筋小胞体ATPアーゼとして単離しました(1970年)。彼は、1985年に遺伝子解析から、この酵素のアミノ酸配列を決定しました。このカルシウムポンプは、ATP一分子を分解しながら、三分子のカルシウムを筋小胞体内に取り込みます。

筋小胞体の膜蛋白質の70%を占めるカルシウムポンプは、筋肉が静止していても活動していても、常時カルシウムを取り込みつづけます。2001年、カルシウムポンプの立体構造が江橋の孫弟子にあたる東京大学の豊島近によって明らかにされ、カルシウムの取り込みのようすが理解されるようになりました。

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