トレーニングで負荷や重量を適切に設定しないと効果がない
負荷の種類
ウェイトトレーニングのための負荷にはいろいろな種類があり、負荷のかけ方にもさまざまな方法があります。
「負荷をかける」ことの最も原始的な形態は、重力に抗して自分の身体を支え、立ち上がることです。地球上で生きている限り、必ず生じる「体重」という身体の重さは、それ自体、無意識のうちにかけられている負荷にほかなりません。その意味では「負荷」の原点は「重力」ともいえます。
さらに「歩く」「走る」「跳ぶ」などの動作が加わることによって千変万化する負荷となります。その意味では、人間は生まれてから今日まで、無意識のうちに負荷を克服してトレーニングを積んできていることになります。
しかし、人間が重力に抗して立ち上がり、歩き始めることは、人間が進化の過程で身につけたごく自然な行為です。私たちはそれを「成長」と理解しており、トレーニングとはいいません。
成長はある時点で止まり、いずれ老化を迎えます。
成長と老化が加齢とともにごく自然にいとなまれれば、それは見事な完結を見せますが、途中で病気をしたりケガをして思わぬブレーキがかかります。このような時、身体に力がついていないと日常的動作にも支障をきたします。また、スポーツなどで他者よりもっといい動きをしたい時などは自然の成長以上の筋力が必要となります。ここに成長とは違う、自分の意思による筋力向上の方法と努力が必要になってきます。それがトレーニングです。
トレーニングとは、人為的・作為的に負荷をかけ、意識的にそのレベルを上げていくことをいいます。自分の身体を支え、立ち上がり、歩くことが自然な成長なら、目的と意志をもって、もっと速く歩く、走る、速く走る、長時間走る、長距離を走る、長距離を速く走ると負荷のレベルを高めていくことがトレーニングになっていきます。
一般的なのは固型の重量物
ウェイトトレーニングの負荷として最も一般的に使われているのが固形の重量物です。重量物は安全性や扱いやすさを考慮して普通は丸型のプレート状に加工され、握りが付いています。ダンベルやバーベルがその代表的なものです。小刻みな重量設定の精度を保持するため、摩耗や破損の少ない金属性のものが最も多く使われていますが、最近はゴム製のものや、一定の重量の範囲で水を注入して自由に重量を加減できる水注入式のものもあります。
いろいろな負荷がありますが、求められるのは筋の収縮様式に対して合理性と汎用性があり、細やかで多彩な人体動作に適合するものです。
機械的負荷やゴムチューブも
固形の重量物のほかにも、負荷の形態にはいろいろな形があります。負荷を空気圧で与えたり、油圧で与えたり、コンピュータで制御するものもあります。これらはすべて機械的に制御されているもので「トレーニングマシン」と呼ばれています。
また他者(パートナー)に力を加えてもらったり抑えてもらったりして負荷をかけ、その力(負荷)に抗していく方法(パートナー・レジスタンス・トレーニングHPRT)や、ゴムの張力・反発力を負荷として活用する方法(チューブトレーニング)もあります。
それぞれの特性、長所を活かす
負荷の形状・形態はトレーニングの方法や効果にいろいろな影響を与えます。どの方法にも固有の特徴があり、その良否は並列的には語れません。
固形の重量物(ダンベルやバーベル)は、いうまでもありませんが、いつも重さ(負荷)は一定です。これに対してマシンは機械的に負荷を変化(制御)させることができます。
PRTも相手(実施者)に合わせて負荷の強さや角度を自在に加減できます
チューブトレーニングは引張る長さやチュープの重ねる本数、握り幅の長短などによって負荷を調整できます。
また、PRTやチューブトレーニングは、パートナーとの位置取りやチューブの取り付け場所、ポジションの取り方によって、どのような態勢でも負荷をかけられるため、実際的な動きに対応した実戦的トレーニングができます。
それぞれにいいところがあり、向き不向きがあります。そのため一つの負荷形態に固執するとトレーニング効果も偏ります。それぞれの負荷形態の特性や長所を活かし、相互補完するように適宜使い分けることが望まれます。
実際のトレーニングでは、負荷の強度、持続時間、頻度の二つの条件を満たすことが重要です。一般的にはハイパワーをねらったトレーニングでは重い負荷(重量)を回数少なく行い、持久力向上をねらったトレーニングでは軽い負荷で回数多くするのが効果を上げるといわれています。もちろん、その効果をより高めるには、適度な栄養と体養が欠かせません。
どのくらいの重さのものをどのくらい反復するかということです。
これがトレーニングの内容や種目を決定づけます。
負荷の設定はきわめて個別的で、一般論として示せるものではありません。基礎体力や筋力の差、男女の性別、トレーニングの目的や、その人のトレーニングの習熟度によって違ってきます。
そこで、ここではその基本となる考え方と方法を紹介します。
RM(アールエム)法
RMとは「RepetitionMaximum」の略で「最大反復回数」を意味します。ある重量に対し、その重さを何回繰り返すことができるか、その反復可能な回数によって負荷を決める方法で、これを「RM法」といいます。通常、RMの前に「8RM」とか「12RM」とか数字をつけ「その数字の回数だけ反復できる最大の負荷」を示します。「1RM」と表記すれば「1回反復できる重さ」、つまり「1回しか反復できない重さ」であり、その人にとって最大)挙上重量ということになります。
トレーニングプログラムでは、このRM表示の負荷(重量)に回数を付記し反復回数を示します。例えば「12RM×8回」というように表記します。これは12回反復できる(13回目は反復できない)負荷を使い、それを8回反復するという意味です。
回数表記のない場合は、そのRM数いっぱいまで行うというのが一般的です。
2%(パーセント)法
1回反復できる重量、つまり1回しか反復できない、その人にとって最高の負荷(最大拳上負荷=1RM)に対し、その何割の負荷を使用するか、それを「%」で求める方法を「%法」といいます。
そのため、この%法では、まず自分の最大筋力を知ることが必要になります。最大筋力を知ったうえで、最大筋力の何%に相当する負荷(重量)を使うかを決めるものです。
これまでの研究と経験から、1RM (1回反復可能=l00%)に対し、
95%=2回反復可能
90%=3~5回反復可能。
80%=8回反復可能
70%=12回反復可能
など1RMに対する割合(%)と反復回数の相関が示されています。
しかし、体力や筋力の差、トレーニング部位やエクササイズ種目、その人のトレーニングの経験度、そして男女の性差などによって、この反復可能回数は誤差が生じます。あくまでも「目安」として認識するのが賢明でしょう。
主観的運動強度法
「これは軽い」とか「重い」など主観的な感覚によって負荷を設定する方法を「主観的運動強度法」といいます。「軽めのもので10回」とか「非常に重いもので3回」といったように、その人の感覚に合わせ負荷を選定する方法です。この「軽い」「重い」といった主観による「尺度」も、これまで多くの研究者やトレーニング実践者たちによって経験的に割り出され最大筋力(最大挙上負荷=1RM)との相関値として示されています。
マシントレーニングの場合には、少々重くセットしてしまっても重量の再セッティングは容易にできますが、フリーウェイトの場合はプレートをセットをするだけで1~2分くらいはかかってしまいますので、自分の筋力を知り、トレーニングの目的をしっかり決めておく必要があります。
トレーニング上級者なら自分の使用重量は感覚的にわかりますが、初心者ではそのようなことはできません。
初心者は次のような重量選択を一つの目安にするのが無難でしょう。
マシン(ウェイトスタック式)の場合は、
・一番軽い重量からテストして20回くらい挙上できる重量にセットして15~20回運動して下さい。
・フリーウェイトの場合は、
ダンベル=肩・腕のトレーニング 3~5kg(片方)
胸・背のトレーニング 5~10kg(片方)
脚部のトレーニング 5~10kg (片方)
バーベル=肩。腕のトレーニング(シャフトのみ)10~20kgから5~10kgアップ
胸・背のトレーニング 20~40kgくらい
脚部のトレーニング 20~50kgくらい
で行うとよいでしょう。
女性は一番軽い重量から行いましょう。