筋温が筋肉を鍛えるのに意識する必要があり20~30℃で最大筋力を発揮する
温度と筋力
日本には四季があり、それに合わせて気温も大きく変化します。
1月と2月の平均気温はおよそ5℃です。それに比べて7月と8月の夏期の平均気温は26℃と高温になります。日本では、1年間に気温が20℃以上も変動するのです。
気温は1年の間でも大きく変動しますが、体温は36~37℃の間でほぼ一定に保たれます。このことから、人間は恒温動物に分類されています。
私たちのからだには、このようにからだの状態を一定に保とうとする働きがあります。これを「ホメオスタシス」といいます。
しかし、ある温度にからだを長時間さらしておくと、その温度に応じて筋温が変化することがわかっています。いろいろな温度の水を満たした水槽にからだの一部を120分間つけておき、その部分の筋温の変化を調べた結果、温度の高い水の中にからだの一部をつけておくと、その部分の筋温は高くなります。反対に、温度の低い水の中につけると筋温は低くなります。
からだ全体では環境の変化に影響されることなく一定の状態を維持するようになっていますが、筋肉の温度はまわりの環境温度に影響されることがわかります。
さまざまな温度の水が満たされている水槽の中に前腕部をしばらくつけておき、その後、最大筋力を測定した結果、水温が20℃までは、水温が高くなるのにともなって最大筋力も増加します。
そして、20℃で最大筋力はピークに達します。水温が20℃以上では、最大筋力はほぼ一定になります。
この結果から、筋温が低いときには発揮される筋力は小さく、大きな筋力を発揮するためには筋肉はある程度温まっている必要があることがわかります。
また筋温は筋持久力にも影響を及ぼします。筋温が20℃~30℃のときにピークとなります。筋温が低くても高くても筋持久力は低下します。
からだが年齢とともに変化していくことは、まぎれもない事実です。誕生した人間は発達、成熟、老化という過程をたどり、それぞれの時期にはからだの構造も機能も大きく変わっていきます。
筋力についても、年齢とともに発達、成熟、老化という三つの過程をたどります。
男女とも20歳までの発達期には筋力は著しく増加します。3歳から20歳の間にかけて握力は約9倍になります。20歳代から30歳代までの成熟期間は、筋力はほぼピークが保たれます。そして、40歳以降の老化期には加齢にともなって筋力は次第に低下していきます。30歳代から70歳までで筋力は約30~40%低下します。
握力以外の筋力についてもほぼ同様の傾向を示します。
筋力の年齢変化の原因
随意最大筋力の大きさは、筋断面積(筋肉の太さ)筋線維タイプ(速筋線維と遅筋線維の割合)運動単位(神経支配)などによって決まります。
したがって、年齢による筋力変化の原因は筋断面積、筋線維タイプ、運動単位が年齢によって変化することにあると考えられます。
筋断面積と年齢
筋肉が太いほど大きな力が出せることは、日常的にもなんとなく実感できることでしょう。最近では超音波やMRIなどを利用して筋の断面画像を撮り、その面積から筋の太さを求めることができるようになりました。
このような方法を使って、筋肉は太いほど大きな力を出すことができるということが、科学的にも明らかにできるようになりました。
また、筋断面積の測定はいろいろな年齢の人についても行われ、筋断面積と年齢の関係についてもわかってきました。
筋断面積は20歳に最大になり、その後は年齢とともに減少していきます。とくに40歳からの解面積の減少は著しく、これが老化期の筋力低下の原因の一つであるといえます。
速筋と遅筋の違い
速筋線維の面積の割合が最大になり、それ以後は加齢にともなって速筋線維の面積の割合が著しく減少していきます。
このような結果から、発達期には力を出しやすい速筋線維の面積の増大、すなわち速筋線維が太くなることによって筋力の増加が起こったと考えられます。逆に老化期では速筋線維の断面積が小さくなるために筋力の低下が起こるのだといえます。